1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03453031
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
田井 晰 姫路工業大学, 理学部, 教授 (20029961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 佳久 姫路工業大学, 理学部, 助教授 (30112543)
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Keywords | 光化学 / 不斉増殖 / 一重項増感反応 / 光異性化反応 / 芳香族エステル |
Research Abstract |
光化学反応は温度の制約を受けず、熱反応では合成因難な化合物の合成が可能であることなどいくつかの利点を有するが、過去25年間にわたる精力的な研究にかかわらず、報告されている光学活性な増感剤を用いた光化学的不斉誘導反応の光学収率は極めて低く、光化学的不斉増殖は末だ達成されていない。本申請者らによる平成3年度の研究では、励起状態における不斉認識機構の検討のために新規に合成した一連の芳香族ポリカルボン酸エステルによるオレフイン類・シクロプロパン誘導体の一重項増感光異性化反応において、従来に報告された最高値7%を大きく上回る70%以上の、不斉光増感異性化反応としてはきわめて高い光学収率を得た。これは、用いた不斉源の20倍以上の不斉増殖に当たる。また。蛍光消光実験において、増感剤の励起一重項状態が反応基質により効率よく消光されるとともに、長波長側にエキサイプレックスからの弱い蛍光が出現することが認められた。以上の結果から、光学活性な芳香族エステルによる光増感反応において高い光学収率が得られた理由は中間に励起増感剤と反応基質の間に比較的コンフォメ-ションの固定されたエキサイプレックスが形成され、その寿命内に励起エネルギ-とともに立体化学的情報が効率よく伝達されるためであることを明らかにした。さらに、興味深いことに立体区別の方向が光照射温度により逆転し、従来の不斉反応の常識に反して高温側では温度の上昇とともに光学収率が向上すると言う極めて特異な現象を見いだした。本研究では、さらにこの高い光学収率・不斉増殖率と特異な温度依存性の原因を、キラルな光増感剤の基底状態および励起状態の構造を円二色性スペクトル(今年度購入・使用中)の温度変化と理論化学計算(MM2,MNDO)により解明すると共に、これらの成果を活用してさらに高度な光化学的不斉増殖系の構築を目指す。
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[Publications] N.Yamasaki,Y.Inoue,T.Yokoyama,A.Tai,A.Ishida,and S.Takamuku: "Steric HindranceーInduced Dual Fluorescence of Congested Benzenehexacarboxylates" J.Am.Chem.Soc.113. 1933-1941 (1991)
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[Publications] Y.Inoue,H.Shimoyama,N.Yamasaki,and A.Tai: "Enantiodifferentiating Photoisomerization of 1,2ーDiphenylcyclopropane Sensitized by Chiral Aromatic Esters" Chem.Lett.1991. 593-596 (1991)
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[Publications] Y.Inoue,N.Yamasaki,T.Yokoyama,and A.Tai: "Enantiodifferentiating ZーE Photoisomerzation of Cyclooctene Sensitized by Chiral Alkyl Benzenepolycarboxylates" J.Org.Chem.57. (1992)
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[Publications] Y.Inoue,T.Okano,N.Yamasaki,and A.Tai: "Enantiodifferentiating Photocyclodimerization of Phenyl Vinyl Ethers and 4ーMethoxystyrene Sensitized by Chiral Aromatic Esters" J.Photochem.Photobiol.A. (1992)