1993 Fiscal Year Annual Research Report
珪酸塩超高圧相のカロリメトリーによるマントル深部構造とダイナミックスの研究
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03453058
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
赤荻 正樹 学習院大学, 理学部, 教授 (30126560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敏弘 学習院大学, 理学部, 助手 (40235974)
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Keywords | マントル / 相転〓 / 熱測定 / 転移エンタルピー / 高圧実験 / ペロブスカイト / オリビン / 元素分配 |
Research Abstract |
1.MgSiO_3ペロブスカイトを25GPa、1700℃で合成し、そのエンタルピーを測定した。このために5mg程度の微少量の高圧相のエンタルピーを高精度に測る方法を確立した。この結果、MgSiO_3輝石-ペロブスカイト転移のエンタルピーが102.2±2.5kJ/molと求められ、この値からMg_2SiO_4スピネル→MgSiO_3ペロブスカイト±MgO分解反応のエンタルピーが86.1±3.6kJ/molとなった。このエンタルピー値から、高温高圧下でこの分解反応が起こる相境界線が-3±1MPa/kの負勾配を持つことが示された。ところで上部マントルと下部マントルが同一化学組成であるか異なっているかという問題は、マントル対流の立場からみると、上部、下部マントルが一体で対流するか別個に対流するかという問題と考えてよい。今回求められた相境界線の勾配値を、最近のマントル対流のシミュレーションと組み合わせることにより、上部マントルと下部マントルは主として別個に対流しているが、マントル全体にわたる大規模な対流も断続的に起こるという重要な結論が得られた。 2.Mg_2SiO_4-Fe_2SiO_4系オリビン固溶体のエンタルピーの非理想性を溶解熱測定法により決定した。この目的のため不活性雰囲気中で試料の酸化を防ぎながら溶解熱を測定する方法を開発した。この結果オリビン固溶体が正の非理想性をもち、組成にたいして対称的であること、非理想パラメータW_Hが5.5±1.7kJ/molであることが示された。これらのことはオリビンと共存鉱物間のMg-Fe分配実験から推定されていたことと調和的である。 3.金属鉄と珪酸塩鉱物間のNi、Co、Mnの分配を1400℃、3〜11GPaで調べた。この結果圧力の増加とともにNi、Coの分配係数は減少し、Mnのそれは増加し、超高圧下ではこれらの分配係数がすべて1に近づくことが明らかになった。このことからマントルと核の分離過程を議論する上では、従来重視されていなかった分配係数の圧力効果を考慮することが重要であることが示された。
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[Publications] Akaogi,M.: "Heat capacity of MgSiO_3 perovskite" Geophys. Res. Lett.20. 105-108 (1993)
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[Publications] Yusa,H.: "Calorimetric study of MgSiO_3 garnet and pyroxene" J. Geophys. Res.98. 6453-6460 (1993)
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[Publications] Akaogi,M.: "Refinement of enthalpy mesurement of MgSiO_3 perovskite" Geophys. Res. Lett.20. 1839-1842 (1993)
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[Publications] 赤荻正樹: "マントル鉱物の高圧相転移と熱力学" 鉱物学雑誌. 22. 201-206 (1993)
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[Publications] Kojitani,H.: "Calorimetric study of olivine solid solutions in the system Mg_2SiO_4-Fe_2SiO_4" Phys.Chem.Minerals. (in press). (1994)
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[Publications] Suzuki,T.: "Pressure effect on Mn,Co and Ni partitioning beween iron hydride and mantle minerals" Proc.Japan Acad.(in press). (1994)