1991 Fiscal Year Annual Research Report
フィブロインの組織特異的生産と分泌に関する遺伝子機能の解析
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03453133
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水野 重樹 東北大学, 農学部, 教授 (90112903)
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Keywords | フィブロイン遺伝子 / フィブロインH鎖 / フィブロインL鎖 / 転写因子 / in vitro転写系 / 分泌変異 / 遺伝子組換え / cDNA発現ライブラリ- |
Research Abstract |
フィブロイン遺伝子の発現調節とフィブロインの分泌に関してフィブロインのサブユニット構造(H鎖、L鎖)に着目して研究を進めた。 最近、研究代表者らがL鎖遺伝子の全構造を明らかにしたところ、5'上流域約ー1kbの範囲内にH鎖遺伝子の上流域配列と相同な8ー10bpの配列が約50ヶ所、18〜30bpの相同性の高い部分が3ヶ所存在することが示された。そこでこれらの配列に結合する共通の転写因子が存在することを想定してゲルシフト法で調べた結果、L鎖遺伝子の5'上流-278〜-307に存在する両遺伝子に相同性の高い配列に特異的に結合するタンパク質因子が後部絹糸腺の核内に存在することが分かった。現在、後部絹糸腺のcDNA発現ライブラリ-をこのDNA配列との特異的結合能を指標としてスクリ-ニングし、いくつかのポジティブクロ-ンを得て解析を進めている。一方、この様な因子の機能を調べる目的でin vitro転写系の確立を目指している。これまでに5令2日目の後部絹糸腺の核抽出液により超らせん型のL鎖遺伝子が正確な転写開始を受けることを認めており、現在さらに転写の最適反応条件を検討している。 フィブロインの分泌に関しては、L鎖遺伝子の変異であるNdーs、H鎖遺伝子の変異であるNd(2)がともにフィブロインの分泌を行えないことに着目してそれらの機構を遺伝子およびタンパク質のレベルで研究した。Ndーs変異ではL鎖遺伝子の第3イントロン中で組換えが生じ、第4エキソン以下が本来L鎖遺伝子の3'下流約10kbに存在した2つのエキソンと置き換っていることが明らかになった。このため正常なL鎖遺伝子の第6エキソンに含まれる、H鎖との結合に関わるCysコドンが存在しない。Nd(2)変異の遺伝子レベルの解析は進行中であるが、L鎖との結合に関わるCysを含むC末領域の遺伝子配列に変化はなく、遺伝子内部の変異に基づくタンパク質高次構造の変化が原因であると推定している。
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