1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03453161
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩崎 不二子 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (10017329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 正憲 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (00201822)
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Keywords | X線結晶構造解析 / 低温X線回折実験 / 電子密度分布 / 原子価拡張性結合 / 多極子展開法 / 有機硫黄化合物 / ヘテロ原子化学 |
Research Abstract |
本研究は、低温状態におけるX線回折精密測定によって、結合電子・非共有電子対などの電子密度分布を実験的に求め、硫黄化合物における「原子価拡張性の結合」の本質を解明することを目的とするもので、平成3〜5年度の3年継続予定のものである。今年度の成果は以下の通りである。 1.これまでに当研究室で行ってきた多数の有機硫黄化合物のX線結晶構造解析の結果を基に、結晶性がよく安定で低温精密測定実験に適する原子価拡張性有機硫黄化合物として、2種類のテトラアザチアペンタレン誘導体について電子密度分布の研究を行なった。これらは典型的異常原子価S-N結合を持つ化合物である。 143Kで精密測定を行ない、多極子展開法を用いて原子座標、温度因子、原子散乱因子の結合の効果等を精密化して電子密度分布を得た。その結果、原子価拡張性を示すS-N結合の結合電子はN原子近傍にあり、S原子は正電荷を持つ傾向にあることなど結合の分極的性質が明らかとなった。また、S原子周辺のp電子と孤立電子対とのカップリング効果などが示された。 2.原子価拡張性を示さない有機硫黄化合物の電子密度と比較するために、 4,5-ビス-フェニルチオジベンゾチオフェンについても低温精密測定実験を行ない、多極子展開法を用いた精密化により電子密度分布を検討した。その結果、チオフェン環やスルフィドのS原子の電子密度に関して、原子価拡張性結合とは異なる傾向が得られた。また、チオフェン環に垂直に孤立電子対の電子の存在が見られ、sp_2混成でないことが示されたことは新たな問題を提起したといえる。 これらの研究における低温測定は昨年度購入の試料低温装置を使用し、精密化計算や電子密度分布の図形処理は、主として今年後購入設備であるワークステーションを用いて行なった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] N.Matsumura et al.: "Synthesis and Characterization of 10-Se-3 Type Selenatetraazapentalene Derivatives with a Hypervalent Selenium" Phosphorus,Sulfur and Silicon. 67. 135-140 (1992)
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[Publications] M.Yasui et al.: "Structure of 2,3-Di-tert-buty1-5,6,7,8-endo-tetrahydroxy-methyl-bicyclo[2.2.2.]oct-2-ene" Acta Crystallogr.C48. 1065-1068 (1992)
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[Publications] F.Iwasaki et al.: "An Isomeric Series of Thiophene-fused Tetracyanoquinodimethanes Tetracyanoquinodimethanes II.The Ctystal and Molecular Structures" Bull.Chem Soc.Jpn.65. 2173-2179 (1992)
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[Publications] F.Iwasaki et al.: "An Isomeric Series of Thiophene-fused Tetracyanoquinodimethanes III.Crystal Structures of Charge-transfer Complexes with TTF" Bull.Chem Soc.Jpn.65. 2180-2186 (1992)
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[Publications] M.Yasui et al.: "An Isomeric Series of Thiophene-fused Tetracyanoquinodimethanes IV.Crystal Structure of 2:3 Charge-transfer Salt with Tetraethylammonium" Bull.Chem Soc.Jpn. 65. 2187-2191 (1992)
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[Publications] Xiang Chen et al.: "Synthesis,Structure,and Reactions of 10-Bi-4 Organobismuth Ate Complexes" Tetrahedron Letters. 33. 6653-6656 (1992)
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[Publications] 岩崎 不二子(分担執筆): "実験化学講座 第10巻 回折(大橋裕二編)直接法" 丸善, 25/559 (1992)
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[Publications] 岩崎 不二子(分担執筆): "分子性結晶の反応(大橋裕二編)硫黄原子の関与する特異な分子内.分子間相互作用" リアライズ社, 10/342 (1992)