1992 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質工学を利用したタンパク質折りたたみの速度論的解析
Project/Area Number |
03453170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑島 邦博 東京大学, 理学部, 助教授 (70091444)
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Keywords | タンパク質フォールディング / 部位特異的変異 / ヌクレアーゼ / ラクトアルブミン / 反応速度論 / プロリン異性化反応 / タンパク質の構造形成 |
Research Abstract |
本研究では、大腸菌プラスミド中にクローン化された黄ブ菌ヌクレアーゼとヤギα-ラクトアルブミンをモデルとして、タンパク質構造形成の機構を明らかとする。これらのタンパク質の様々の部位特異的変異体を作製し、それらの巻戻り過程を解析する。以下の結果が得られた。 (1)野生型ヌクレアーゼとPro117Gly 変異体の巻き戻りとアンフォールディング反応を紫外吸収ストップトフロー法により調べた。以前のCDストップトフロー法の結果より、二相的であるアンフォールディングの速度過程がプロリン変異により単相となることが示されていた。紫外吸収の方が、CDよりもS/Nの高いデータが得られるので、より厳密な速度論的解析が可能である。その結果、変異体のアンフォールディングも厳密には二相的であり、Pro117以外のプロリン残基も速度過程に関与している可能性のあることがわかった。 (2)Pro117以外のプロリン残基がヌクレアーゼの巻き戻りとアンフォールディングの速度過程にどの様に関与するかを明かとするため、 Pro56をアラニンに変えた変異体(Pro56Ala)を作製した。現在、塩基配列決定による変異体の確認の途上にある。 (3)ヌクレアーゼのクラスII変異体の一つAla69Thrを抽出精製し、その巻き戻りの速度過程を野生型のものと比較した。野生型に比べ、変異体の巻き戻り速度は約100倍遅く、野生型で存在する4つの相の内、速い二つの相がなくなっていることがわかった。これは、アミノ酸置換により、巻き戻り速度が遅くなったため、そこが律速段階となり、速い相が実質上見えなくなったためと考えられる。 (4)α-ラクトアルブミンに、その分子コアの疎水性を変えるアミノ酸変異(Ala30ThrとAla30Ile)を導入し、モルテン・グロビュール状態の安定性に与える影響を調べた。その結果、疎水性の増大は、モルテン・グロビュールを安定化することがわかった。
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[Publications] Kuwajima,K.: "Protein folding in vitro" Current Opinion Biotech.3. 462-467 (1992)
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[Publications] Yutani,K.,Ogasahara,K. Kuwajima,K.: "Absence of the thermal transition in apo-alpha-lactalbumin in the molten globule state" J.MOL.Biol.228. 347-350 (1992)
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[Publications] Ikeguchi,M.,Sugai,S.,Fujino,M.,Kuwajima,K.: "Contribution of the 6-120 disulfide bond of alpha-lactalbumin to the stabilities of its native and molten globule states" Biochemistry. 31. 12695-12700 (1992)
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[Publications] 桑島 邦博: "蛋白質フォールディングの中間体としてのモルテン・グロビュール状態" 生物物理. 33. 26-30 (1993)
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[Publications] 桑島 邦博: "タンパク質の折れたたみ" 科学. 63. (1993)