1992 Fiscal Year Annual Research Report
原核・真核藻類におけるcAMP依存性信号伝達系の解析
Project/Area Number |
03454008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 正之 東京大学, 教養学部, 教授 (80013580)
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Keywords | ラン藻 / Spirulina platensis / 細胞運動 / アデニル酸シクラーゼ / IBMX / cya遺伝子 |
Research Abstract |
1)cAMPによる細胞運動、凝集の促進に関するメカニズムの解析: 糸状性ラン藻 Spirulina Platensisの細胞懸濁液を直径35mmのペトリシャーレに入れた後、異なった濃度のcAMPを加えて、細胞の運動を顕微鏡と接続したビデオモニターで観察したところ、1x10^<-5>MのcAMP添加により最も顕著な細胞運動の促進が見られた。同時に細胞は凝集を始め、10分以内にマット状の集合体を形成した。これら一連の現象は、cAMPに対してのみ特徴的にみられ、cGMPやATP、AMPなどに対してはみられなかった。cAMPが細胞の外側から作用して、細胞の運動を促進したのか、あるいは、一度細胞内に取り込まれ、細胞内のcAMPが上昇し、その結果運動が促進されるのか否かの検討を行った。細胞懸濁液にcAMP分解酵素のホスホジエステラーゼの阻害剤であるIBMXを与えたところ、細胞内のcAMP量は急激に増加した。同時に細胞の運動速度も増加した。細胞外のcAMP濃度には実験を行った期間中大きな変化は見られなかった。この実験結果から細胞内のcAMP濃度の上昇が運動促進のシグナルになっていると推測した。cAMPの添加は呼吸を促進することが観察されたがIBMXによっても呼吸の促進が見られた。すなわち、cAMPの上昇→呼吸の増加→運動の促進のような関係が推定された。呼吸の促進に伴って細胞内ATPレベルの上昇も見られた。これまで、ラン藻の運動におけるATPの関与は疑問視されていたが、今回得られた結果からATPが運動に関与している可能性が示唆された。 2)ラン藻のcAMP合成酵素(アデニル酸シクラーゼ)の遺伝子の単離: これまでに、アデニル酸シクラーゼ欠損(cya^-)の大腸菌のラクトースの発酵を相補するA.cylindricaのDNA断片を単離することができた。更に、このDNA断片の挿入によりcya^-の大腸菌にcAMP合成能力を賦与することに成功した。現在、遺伝子の塩基配列の決定を行っている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kazuko Ohmori: "An increase in the intracellular concentration of cAMP triggers formation of an algal mat by the cyanobacterium Spirulina platensis" Plant Cell Physiol.34(1). 169-171 (1993)
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[Publications] Kazuko Ohmori: "Function of cAMP as a mat-forming factor in the cyanobacterium Spirulina platensis." Plant Cell Physiol.33(1). 21-25 (1992)
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[Publications] 大森 正之: "藻類のcAMPカスケードーその生理的意味を探るー" 植物細胞工学. 4(4). 228-234 (1992)