1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03454014
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 勲 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (70168433)
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Keywords | ハプト藻 / ハプトネマ / 捕食作用 / 混合栄養 / カルシウムイオン / A23187 / カフェイン / プロカイン |
Research Abstract |
本年度はハプトネマの生理的性質と形態構造の3次元構造を調べることに重点をおき、以下の知見を得た。 1.ハプトネマは物理的、化学的刺激によってコイルするが、これはカルシウムイオンが密接に関与した反応である。このことは、次の実験により確かめられた。 1)EGTAによって培地中のカルシウムイオンを除去すると、刺激を与えてもコイリングは起こらない。 2)カルシウムイオノフォアであるA23187を加えるとすべての細胞でコイリングが誘起される。 3)筋肉細胞の現象として知られるCa-induced-Ca-release(CICR)を誘起するcaffeineを加えると、コイリングが起こる。 4)CICRの阻害剤であるprocaineを加えると、コイリングも抑制される。この状態でA23187を加えると、コイリングが誘起れる。 以上の結果は、コイリングを誘起するカルシウムイオンの供給源として外界の培養液だけでなく、細胞内のカルシウムイオンのプールがあることを示唆している。ハプトネマ中の小胞体がカルシウムプールである可能性が高いが、現時点では確定できない。形態とコイリングや屈曲の方向については次の知見が得られた。 1.ハプトネマ微小管は絶対配置構造をもち、基部付近で樋状に並び、開口部を常に左鞭毛小体の方向に向けている。 2.コイリングは常に樋状構造の微小管の凸部の方向に向かって起こる。 3.ハプトネマは右ネジの方向のらせんとして形成される。 4.屈曲はコイリングと反対の方向に向かって起こり、屈曲の方向には食胞が存在する。これらのことから、ハプトネマのコイリングと屈曲は、細胞オルガネラの絶対配置に対応して起こっていることが分かった。えさ粒子の付着と運動の機構はよく分からないが、レクチンが結合する糖蛋白か糖脂質がハプトネマに特有に存在することから、その関与が想定される。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Inouye,I.and Kawachi,M.: "The Biology of the Prymnesiophyta. Chapter4. The Haptonema" Oxford University press., 400 (1994)