1993 Fiscal Year Annual Research Report
水稲の個葉光合成速度に及ぼすケイ酸の効果に関する生理・組織学的研究
Project/Area Number |
03454043
|
Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
縣 和一 九州大学, 農学部, 教授 (00091364)
|
Keywords | ケイ酸 / ケイ酸植物 / 水稲 / 光合成 / 蒸散 / 拡散伝導度 / 孔辺細胞 / 乾物生産 |
Research Abstract |
水稲は、ケイ酸を積極的に吸収蓄積するケイ酸植物であり、ケイ酸施用により乾物生産及び子実生産が顕著に増大する.しかし、その基礎となる光合成・蒸散に対するケイ酸の生理的作用は明確ではない.本研究はこのような背景にたって平成3年度以来3年間にわたって乾物生産に対するケイ酸の効果を光合成・蒸散速度及びそれらの律速因子を中心に環境要因との関連から生理学的に究明したものである。 平成5年度、平成3、4年度の成果を基礎に光合成・蒸散速度に強く影響する気孔開閉調節機能に対するケイ酸の影響を生理、組織学的に究明した.即ち、気孔開閉の主要な環境刺激である光、湿度、CO_2及び青拡散伝導度の比較から詳細に検討した。光の急激な低下に対しケイ酸処理区(+Si区)は光低下直後急激に気孔が閉鎖する2段階的な傾向を示したのに対し、ケイ酸無処理区(-Si区)は変曲点をもたず徐々に低下した.さらに、気孔開孔のシグナルである青色光に対して-Si区の気孔は敏感に反応した.このことから、ケイ酸は孔辺細胞中でK+イオンの動きに関与していることが示唆された.また、-Si区の気孔は低湿度条件下で気孔内腔のCO_2濃度(Ci)に対する開度が高く過剰蒸散が誘発された.このことから、ケイ酸は、孔辺細胞におけるCO_2濃度の感知に関与し、適切な気孔開閉調節を促していることが示唆された。さらに湿度に対しては低湿から高湿状態に変化させた場合の気孔開閉が+Si区で敏速であった.表皮細胞の電顕的な観察から、ケイ酸の蓄積による孔辺細胞及びその周辺細胞のアポプラスト領域の肥厚化が観察され、ケイ酸が表皮細胞の発達を促し、低湿度下での水分保持能力及び湿度変化に対する水分輸送能力を増大させていることが推察された.このようにケイ酸は孔辺細胞内の代謝生理的な浸透調整及び物理的な水輸送に関与し適切な気孔開閉調節を実現させていることが明白となった。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] S.Agarie,H.Uchida,W.Agata,F.Kubota and P.B.Kaufman: "Effects of silicon on growth,dry matter production and photosynthesisin rice plants (Oryza sativa L.)" Crop Production and ImprovementTechnology in Asia. 225-234 (1993)
-
[Publications] 東江 栄・内田英樹・縣 和一・窪田文武: "水稲の光合成・乾物生産に対するケイ酸施用効果の品種系統間差異" 九大農学芸誌. 47(1・2). 7-16 (1992)
-
[Publications] 東江 栄・縣 和一・窪田文武・P.B.Kaufman: "水稲の光合成・乾物生産に対するケイ酸の生理的役割 第1報 ケイ酸および遮光処理の影響" 日本作物学会紀事. 61(2). 200-206 (1992)
-
[Publications] 内田英樹・東江 栄・縣 和一・窪田文武・吉田端樹: "水稲の光合成・物質生産に対するケイ酸施用効果 第5報 光・湿度及びCO_2濃度条件が個葉の光合成・蒸散に及ぼす影響" 日本作物学会紀事. 62別(1). 120-121 (1993)
-
[Publications] 内田英樹・東江 栄・縣 和一・窪田文武.: "水稲の光合成・物質生産に対するケイ酸施用効果4.ケイ酸施用効果の品種系統間差について" 日本作物学会紀事. 61別(2). 109-110 (1993)
-
[Publications] 東江 栄・窪田文武・縣 和一・P.B.Kaufman: "イネ科作物の光合成・物質生産に及ぼすケイ酸の作用特性の解明 3.水耕液の窒素条件を変えた場合の諸特性について" 日本作物学会紀事. 60別(1). 130-131 (1991)