1992 Fiscal Year Annual Research Report
サル類CD4およびCD8分子;遺伝子クローニングとSIV感染における役割
Project/Area Number |
03454109
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Research Institution | National Institute of Health (N.I.H.) |
Principal Investigator |
巽 正志 国立予防衛生研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (00133629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網 康至 国立予防衛生研究所, 動物管理室, 研究官 (10202699)
森川 茂 国立予防衛生研究所, ウイルスI部, 研究官 (00167686)
山田 靖子 国立予防衛生研究所, 動物管理室, 主任研究官 (20158223)
松浦 善治 国立予防衛生研究所, ウイルスII部, 室長 (50157252)
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Keywords | カニクイザル / CD8 / CD4 / キメラCD4 / 形質転換細胞 / HIV / SIV |
Research Abstract |
本年度は、昨年に引き続ずきカニクイザルSuppressorT細胞の実質的な機能分子であるCD8α遺伝子のクローニングを試みた。カニクイザル胸腺細胞より、常法に沿いpolyA(+)mRNAを精製し、Gubler-Hoffmann法にてcDNAを合成しλZAPベクターへ組み込み、サルリンパ球ライブラリを構築した。すでに塩基配列が判明しているヒトCD8α遺伝子より、CD8分子コード全領域を含む特定部位を選択し、合成プライマーを作製し、PCR法にてカニクイザルCD8遺伝子を増幅したところ、期待された約0.8kbpの核酸断片が得られた。この増幅断片をプローブにしてプラークハイブリダイゼーション法にてCD8遺伝子が組み込まれているファージを選別したところ、5クローンが得られた。そのうち1クローンよりカニクイザルCD8(CyT8)遺伝子の全塩基配列を決定した。CyT8遺伝子コード領域は708塩基よりなり、ヒトCD8遺伝子と比較して35塩基のみが異なっており、95%の高い相同性を示した。アミノ酸配列レベルでは、シグナル蛋白は3、J-Like Domainは2、膜貫通部位は1、および細胞内部位は2アミノ酸の置換があるのみで高い相同性を示したが、V-like Domainでは7アミノ酸の置換を認めた。サルCD8分子もヒトCD8分子と同様、そのcystine残基の位置は保存され、細胞外構成成分は1個のV-like Domainと1個のJ-like Domainから成り、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーに属することが示された。in vitro TranslationによりCyT8遺伝子はそのアミノ酸配列より期待される蛋白が合成された。 一方、昨年度に分離したCD4遺伝子については、ヒトCD4遺伝子と比較のうえ保存された制限酵素切断部位AflllとBstEllを用いて、サルとヒトCD4細胞外ドメインの組み替えキメラCD4遺伝子を作製し、哺乳類細胞発現ベクターpKS472に組み込みヒト株化細胞HelaにTransfectしG418耐性の形質転換細胞を樹立した。これらの細胞を、サルとヒトCD4遺伝子構成比較のうえ保存されていた部位に対する単クローン抗体OKT4で染めてFlowcytometryで検討したところ、サル、ヒトおよびキメラCD4分子の細胞表面での発現を認めた。次に、この形質転換細胞のHIV-1,HIV-2およびSIVに対する感受性をSyncitium形成とPCR法によるProvirusの検出により検討したところ、HIV-1との結合部位であるヒトCD4ドメイン1を有するヒトおよびキメラCD4のみならず、サルおよびヒトCD4ドメイン1を有しないキメラCD4分子を発現した形質転換細胞もHIV-1に感染した。一方、予備実験ではサル細胞にヒトCD4分子を発現した形質転換細胞はHIV-1に感染しないので、これらの実験事実はCD4分子以外のCofactorがHIV-1感染成立に必要なことを示唆している。
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