1991 Fiscal Year Annual Research Report
家蓄のピロプラズマ症の貧血発生機序に関する臨床病理学的研究
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03454110
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前出 吉光 北海道大学, 獣医学部, 教授 (40002084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 睦 北海道大学, 獣医学部, 講師 (00183179)
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Keywords | バベシア / ピロプラズマ / 貧血 / 赤血球 / イヌ / 酸化障害 |
Research Abstract |
家蓄ピロプラズマ症の冶療・予防法の確立のために,本症の貧血発生機序の解明を試みた。本年度はピロプラズマ原虫の一種であるBabesia gibsoni(B gibsoni)の体外培養法の確立を目指すとともに,原虫増殖に伴う感染赤血球の生化学的,免疫学的変化を検討したところ,以下の成績が得られた。すなわち,(1)B.gibsoniの培養にはαーmediumに正常イヌ血清を40%加えた培養液を使用し,これにB.gibsoni感染犬赤血球をヘマトクリット値で10%になるように浮遊させ,マイクロプレ-トに分注後,5%CO_2下,37℃で培養した。この条件下で培養6日目の原虫寄生率は培養開始時の6〜2 0培に達した。(2) 培養原虫の形態は,環状,球菌型,柳葉,双洋梨状,アメ-バ状,多形型及び花弁型の7型に分類された。原虫増殖時は環状型が減少時には球菌型,アメ-バ-型,柳葉型原虫の割合が増加した。このことから,環境型原虫は増殖型であり,一方球菌型その他の各型は退化変性もしくは休止期にある原虫と推定された。(3) 原虫増殖に伴い,培養赤血球のメトヘモグロビン濃度及び過酸化脂質濃度は上昇した。(4) 原虫増殖時には培養赤血球のグルコ-ス消費量の増加,乳酸産生量及び2,3ーDPG量の増加がみられた。また,(5) 感染赤血球の変形能の低下が認められた。 以上のように,本年度の研究においては,B.gibsoniの体外培養に世界で初めて成功するとともに,その培養によって,原虫増殖に伴う感染赤血球の生化学的変化を明らかにした。これらの成績から、ピロプラズマ感染赤血球では酸化障害が起きていることが判明した。このことが,本症の貧血発生の重要な要因であると考えられた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] T.Murase,T.Hashimoto,T.Ueda,Y.Maede: "Multiplication of Babesia gibsoni in in vito culture and its reltion to hemolysis of infected erythrocytes" Jounal of Veterinary Medical Science. 53. 759-760 (1991)