1991 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脳脊髄液を用いた中枢神経機能評価法とその病態生理学への応用に関する研究
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03454139
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 秀哉 北海道大学, 医学部, 教授 (20000929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 真知子 北海道大学, 医学部, 助手 (70229574)
富樫 広子 北海道大学, 医学部, 講師 (20113590)
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Keywords | 血管性痴呆 / 脳脊髄液マイクロダイアリス法 / 脳卒中易発症高血圧自然発症ラット / 脳脊髄液中アセチルコリン / M_1ー受容体作動薬 / 受動回避反応 / 中枢コリン作動性神経機能 |
Research Abstract |
血管性痴呆の病態生理およびそれに対する薬物投与の影響を神経化学的側面から評価することを目的として、マイクロダイアシス法を応用し、脳血管性痴呆モデル動物の脳脊髄液(CSF)中神経伝達物質濃度の無麻酔無拘束下での定量を試みた(CSFマイクロダイアリシス法)。血管性痴呆モデル動物として、自然発症の血管性痴呆モデル動物として注目されている脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いた。ラットの大槽に埋め込んだガイドカニュ-レに挿入した透析プロ-ベを介して微量注入ポンプにて低速潅流し、集めた潅流液について、アセチルコリン(ACh)およびその代謝産物であるコリン(Ch)をHPLCーECDで測定した。さらに、痴呆による学習・記憶障害を改善することが知られている薬物(フィゾスチグミン、M_1ー受容体作動薬AF102B)を腹腔内投与し、その効果をCSF中神伝達物質濃度を測定することによって神経生化学的に評価した。 本方法によって、CSF中のAChおよびCh濃度を3時間以上にわたって、連続測定することが可能であった。また、正常血圧ラットにフィゾスチグミン、AF102Bを投与すると、AChあるいはCh濃度は投与後30ー60分をピ-クとして上昇した。これに対して、末梢性のACh分解酵素阻害薬であるネオスチグミンはこれらの反応を示さなかった。一方、SHRSPのCSF中ACh農度は正常血圧ラットに比較して有意に低下していた。AF10BはSHRSP中Ch濃度を上昇させた。受動回避反応を指標とした記憶・学習能力試験において、SHRSPは反応潜時の短縮を示し、これはAF10Bの投与によって改善された。これらの結果から、SHRSPでは記憶・学習能力の低下があり、中枢コリン作動性神経機能低下と関連性が推測された。このように、CSFマイクロダイアリシス法は中枢神経機能をとらえる上で有用であると考えられ、病態生理学的あるいは薬理学的研究に応用していく予定である。
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