1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03454166
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 穆彦 東京大学, 医学部(医), 助教授 (50215654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 明 東京大学, 医学部(医), 助手
森 正也 東京大学, 医学部(医), 助手 (90210137)
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Keywords | 甲状腺癌 / 低分化癌 / 免疫組織化学 / p53遺伝子 |
Research Abstract |
研究期間の最終年度にあたり、「甲状腺低分化癌」という概念を生物学的立場、とくに遺伝子(genotype)の観点から確証することに焦点をしぼった。昨年度までに免疫組織化学的検索から、ケラチン、ビメンチンなどの細胞骨格たん白、サイログロブリン、PCNA、あるいはerbB-2、p53などの癌関連遺伝子たん白の発現が病理組織型によって有意に異なること、とくにその中で低分化癌が1つの独立した疾患単位としてとらえうることを報告してきた。 本年度はp53遺伝子の点突然変異という点に着目し、甲状腺癌各組織型において、免疫組織化学染色陽性例のp53遺伝子のエクソン5-8に関する変異をSSCP(single-stranded conformation polymorphism)法、ダイレクト・シークエンス法によって検索した。その結果、(1)高分化癌においては抗p53抗体を用いた免疫染色陽性例(7例)のいずれにもSSCP法、ダイレクト・シークエンス法による変異の同定はできなかった。(2)低分化癌では免疫染色陽性剤6例中2例(33.3%)は点突然変異をみとめた。(3)未分化癌では6例中4例(67%)に変異をみとめ、内3例には1塩基の置換、1例には2塩基の挿入によるフレームシフトを見い出した。 以上のように、甲状腺癌においては分化度の低い、すなわち悪性度の高い組織型を示すものにp53遺伝子の変異の頻度が高いことが示された。このことは、高分化癌から未分化癌への脱分化の過程におけるp53遺伝子の関与を強く示唆していると考えられる。また同時に低分化癌にも点突然変異が同定されたことにより、従来は高分化癌と同類に扱われていた低分化癌は、未分化癌に近い性質を持つもので、高分化癌とは別のカテゴリーに属することを示す有力な根拠がえられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Dobashi,Y.,Sakamoto,A.et al.: "Overexpression of p53 as a possible prognostic factor in human thyroid carcinoma" American Journal of Surgical Pathology. 17. 375-381 (1993)
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[Publications] Yamashita,H.,Sakamoto,A.et al.: "DNA ploidy and stromal bone formation as prognostic indicators of thyroid papillary carcinoma" Acta Pathologica Japonica. 43. 22-27 (1993)
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[Publications] Oyama,T.,Sakamoto,A.et al.: "Encapsulated papillary carcinoma of the thyroid gland" Acta Pathologica Japonica. 43. 516-521 (1993)
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[Publications] Dobashi,Y.,Sakamoto,A.et al.: "Stepwise participation of p53 gene mutation during dedifferentiation of human thyroid carciomas" Diagnostic Molecular Pathology. 3(in press). (1994)
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[Publications] 坂本穆彦: "甲状腺穿刺吸引細胞診の現状と問題点" 日本臨床細胞学会雑誌. 32. 1079-1085 (1993)
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[Publications] 坂本穆彦: "甲状腺腫瘍の病理診断" 内分泌の進歩. 11. 93-101 (1993)