1992 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶剤による神経障害評価のための「神経・心理テスト・バッテリー」の開発と応用
Project/Area Number |
03454210
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
三宅 浩次 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20045363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 博之 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (80106476)
池田 聰子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00045410)
岸 玲子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80112449)
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Keywords | Organic soluents / Neuro-behavioral tests / Color vision / Conduction velocity / toluene / Styrene / Piological monitoring / Case-referents study |
Research Abstract |
今年度は有機溶剤作業者の色覚や末梢神経伝導速度について検討した。 1.色覚について: FRP工程の4工場でのスチレン曝露作業者30名と非曝露者37名の色覚を測定した。暴露者暴露月数49.2ヵ月(2-243ヵ月)と、非曝露者37名(すべて男性、平均年齢37.6±12.0歳)について検討した。器具はLANTHONY低彩度15ヒューテストを使用し、片眼ずつ検査した。評価はBowmanが提唱した計算法に従い、Color Confusion Index(CCI)を算出した。尿中代謝物(マンデル酸)量は平均0.43g/1(0.04-1.60g/1)であった。曝露者のCCI平均は1.225±0.207、非曝露者は1.221±0.238だった。年齢、性別をマッチングした18組について調べたが曝露群と対照群のCCIには有意差はなかった。曝露者についてはCCIと曝露月数の間に相関が認められたが、マンデル酸との相関は認められなかった。また従属変数をCCI、説明変数を年齢、スチレン暴露の有無、アルコール摂取頻度、摂取量、尿中マンデル酸とした重回帰分析では年齢のみが有意であった。以上の結果からは、最近報告されているようなスチレン作業者の色覚異常は見いだされなかった。しかし今回は被験者数が少なく、また年齢が比較的若く、曝露濃度も比較的低いことなどから、今後も調査を続ける必要があると思われる。 2.末梢神経伝導速度について 長期間低濃度暴露している労働者について末梢神経伝導速度を測定した。合成樹脂を製造する化学工場の23人を対象とした。平均年齢は34.8歳、平均暴露年数は15.3年である。主に使用溶剤はスチレン、トルエンで、環境中の溶剤濃度は混合溶剤で管理濃度を1として0.1-0.2、スチレンで0-6.7ppmである。運動神経伝導速度を尺骨神経、腓骨神経で、感覚神経伝導速度を尺骨神経、腓腹神経で測定した。尿中代謝物:終業時の尿中馬尿酸濃度は0.03-0.33g/gクレアチニン、尿中マンデル酸濃度は0.01未満-0.09g/gクレアチニンであった。過去3年間の検診での平均値は馬尿酸が0.10-0.67g/gクレアチニン、マンデル酸が0.01g/gクレアチニン未満であった。尺骨神経の前腕でのMCV、SCVは50m/s以上、腓骨神経MCVは40m/s以上、脾腹神経SCVは37m/s以上で測定値のみから明らかな異常値を示した者はなかった。しかし、曝露年数や尿中代謝物濃度など6項目の暴露指標と年齢を説明変数とした重回帰分析の結果では、暴露年数や尿中馬尿酸の3年間の平均値と腓骨神経MCV、腓腹神経SCVの間に大きくはないが有意に負の関連がみられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 江口 照子,岸 玲子,原渕 泉,荒田 吉彦,湯浅 潤子,片倉 洋子,三宅 浩次,横山 博,藤田 信一: "スチレン作業者の色覚" 第66回日本産業衛生学会(横浜). (1993)
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[Publications] 湯浅 潤子,岸 玲子,原渕 泉,江口 照子,荒田 吉彦,片倉 洋子,三宅 浩次,横山 博,藤田 信一: "有機溶剤取扱い作業者の末梢神経伝導速度" 第66回日本産業衛生学会(横浜). (1993)
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[Publications] T.Eguchi,J.Yuasa,R.Kishi,I.Harabuchi,Y.Arata,H.Miyake: "Vibratory perception threshold and nerve conduction velocity in workers exposed to styrene and tolnene" International Conference on Peripheral Nerve Toxicity(ICPNT)(June,1993 in Kanazawa). (1993)
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[Publications] 荒田 吉彦,岸 玲子,原渕 泉,江口 照子,湯浅 潤子,片倉 洋子,三宅 浩次: "スチレン曝露労働者の中枢神経機能 ー神経行動テストバッテリーによる慢性影響の評価" 第66回日本産業衛生学会(横浜). (1993)
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[Publications] Reiko kishi,Y.Arata,T.Eguchi,J.Yuasa,I.Harabuchi,Y.katakura,H.Miyake: "Neurobehavioral effects of acute and chronic occupational exposure to low level of styrene" 24 the International Congress of Occupational Health(Nece,1993,Sept 26),Abstract. (1993)
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[Publications] Izumi Harabuchi,R.Kishi Hirotsugu Miyake: "Neurobehavioral effects of occupational exposure to organic solvents among industrial painters" 24th International Congress of Occupational Health (Nece,1993,Sept 26) Abstract. (1993)