1992 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール性肝障害の遺伝的素因とチトクロームP450 IIE1遺伝子の多形性
Project/Area Number |
03454232
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Research Institution | KANAZAWA MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高田 昭 金沢医科大学, 医学部, 教授 (30064497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 幹宏 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00155425)
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Keywords | アルコール性肝障害 / cytochrome P4502E1 / 遺伝的多形性 / 発生機序 / messengerRNA / 遺伝子分析 / 酵素誘導 / アルコール代謝 |
Research Abstract |
本研究の開始の時期には、P4502E1の遺伝的多形性の存在および多形性と誘導との関係を証明することが、最も困難な研究課題と考えられていた。しかし幸いなことに、研究の開始時期に一致して、Hayashiらによって、P4502E1の5'-flanking regionの遺伝的多形性が明らかにされ、HepG2細胞を使ったCATassayから、c2遺伝子のtranscriptional活性はc1遺伝子の10倍も高いことが報告された。そこで直ちに、この研究方法をアルコール(AL)性肝障害に応用することにした。期待されたごとく、AL性肝障害患者のP4502E1の遺伝子型はB型、またはC型のみで、すべてc2遺伝子の保有者であった。一方、肝障害ない大酒家での遺伝子型はすべてA型であり、c1遺伝子のみの保有者で、両者の間には際だった差が認められた。非AL性肝障害患者、および健康成人でのA型の頻度は60-70%で、AL性肝障害での頻度とは明らかに異なっていた。このように、AL性肝障害とP4502E1の遺伝的多形性とは密接に関係しており、P4502E1の遺伝子型がAL性肝障害発現の重要な遺伝的素因であることが判明した。このことは、AL性肝障害の発生には、非AL脱水素酵素(ADH)系を介するALの代謝の亢進が重要であることを意味しており、従来不明のままであったAL性肝障害の発生機序の解明にもつながっていると考えられた。肝組織のmessengerRNAを測定すると、B型での値は、A型のそれの約3倍であったが、このことによって、人においてもP4502E1の誘導はその遺伝子型によって規定されており、c2遺伝子の保有者での誘導の強いことが明確となった。アルデヒド脱水素酵素-2(ALDH2)の遺伝的多形性もAL性肝障害の発現に関係しているが、ALDH2欠損例を除いても、AL性肝障害におけるc2遺伝子の頻度には差はなかった。以上のごとく、AL性肝障害の発現はP4502E1の遺伝子によって規定されており、肝障害の発生は非ADH系でのAL代謝亢進に直結していることが明確となった。
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[Publications] Akira Takada: "Genetic polymorphisms of cytochrome P4502E1 related to the development of alcoholic liver disease." Lancet.
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[Publications] Mikihiro Tsutsumi: "Hepatic messenger RNA contents of cytochrome P4502E1 in its different genotypes." Internat Hepatol Commun.
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[Publications] Akira Takada: "Genotypes of ALDH2 related to liver and pulmonary diseases." Alcohol&Alcoholism.
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[Publications] 堤 幹宏: "大酒家における消化器癌の発生要因." アルコールと医学生物学. 13. (1993)
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[Publications] Mikihiro Tsutsumi: "Genetic factors related to the development of carcinoma in digestive organs." Alcohol&Alcoholism.