1991 Fiscal Year Annual Research Report
肝分離潅流を用いた温熱療法および高濃度化学療法による肝癌の治療
Project/Area Number |
03454325
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中野 博重 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20075071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金廣 裕道 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (30204580)
瀬川 雅数 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (10183427)
中島 祥介 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00142381)
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Keywords | 肝癌 / 温熱療法 / 化学療法 / 肝分離潅流 |
Research Abstract |
肝分離潅流による温熱および化学療法の実験的研究 肝癌に対する肝分離潅流による温熱および化学療法の確立を目的として、大動物を用いた実験モデルを作成しその安全性につき検討した。 (方法)ビ-グル犬を用い、肝を周囲組織より遊離後、送液路(門脈)、脱液路(肝下部下大静脈)を用いて体内で30分間肝分離潅流を行った。 (実験群)I群:酸素化温熱潅流群(n=10)。潅流液として42°C加温酸素化人工血液Oxypherolを用いるIーa群(n=5)と、42°C加温酸素化希釈血液(Ht 15%)を用いるIーb群(n=5)。両群ともポンプで潅流した。 II群:無酸素化温熱潅流群(n=5)。潅流液として42°C加温乳酸化リンゲル液を用いる。70cmより落差潅流。 III群:無酸素化温熱潅流、化学療法群(n=5)。II群と同じであるが潅流液中にマイトマイシンC(以下MMC)を加え総投与量を0.5mg/Kgとした群。 各群で、潅流中、後の肝、食道温、肝組織pH、動脈血中ケトン体比(AKBR)、GOT,GPT,ALP,LDH,BUN,Cr、さらに血中MMC濃度、肝組織像について検討した。 (成績)肝温度は各群とも潅流開始10分後に41°C以上となり、食道温は変化なかった。I群のAKBRは、潅流終了3時間後で0.7以下と前値に回復せず全例2日以内に肝不全死した。II、III群においてAKBRは潅流終了1時間目には回復し、全例2週間以上生存した。一般検査でもGOT,GPT,ALP,LDHは術後4日目まで上昇したが、7日目に術前値に回復し、BUN,Crは変動なかった。肝組織pHは潅流開始前7.3で潅流開始と同時に低下し最低値6.1になるが、潅流終了後30分で7.0に回復した。III群では潅流時に、MMCの全身循環への漏出を認めなかった。I群の肝組織像は広範な出血、壊死を認めたが、II、III群では7日目に行った生検像はほぼ正常であった。 以上より、肝分離潅流による30分間無酸素化温熱化学療法の肝障害は一過性で全身への影響は少なく、本手技の臨床応用の可能性が示唆された。
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