1992 Fiscal Year Annual Research Report
超低体温下、逆行性脳組織潅流の方法と安全性確保に関する実験的研究
Project/Area Number |
03454332
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
森 渥視 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80026971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 隆彰 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (30235882)
尾上 雅彦 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (90214197)
渡田 正二 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (90191816)
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Keywords | 逆行性脳組織潅流 / 拍動流体外循環 / 超低体温下体外循環 |
Research Abstract |
本年度の実験概要であるが、雑種成犬を用い、超低体温下逆行性脳組織潅流の実験を行っている。実験方法であるが、大腿動脈より送血を行い、上下大静脈より脱血した体外循環を設立した後、鼻咽頭温20℃の超低体温に導入した。大動脈を遮断、心停止を得た後、逆行性脳組織潅流を開始する。昨年度までの実験により、雑種成犬では、人では存在しない静脈弁の存在が明らかになったため、送血部位を外頸静脈としていたが、本年度は、より脳組織に近位である内顎静脈に送血部位を変更している。また、送血方法は、脳組織においては、潅流圧が過大になると、脳組織の損傷が増加すると言われており、本年度は昨年までの潅流量依存式から、潅流圧依存式に変更し検討を行った。この実験モデルを用い、両側内顎静脈から、外頸静脈圧で10、20、30mmHgと変化させて逆行性脳潅流を行うとともに、拍動流による送血を行い、送血波形による効果を検討し、以下の結果を得た。 1)逆行性脳潅流法においては、循環停止法と比較して、脳組織内ATP濃度は有意に高く温存され、脳組織保護効果のあることが確認された。 2)送血波形として、通常の送血方法である定常流送血と拍動流送血との比較検討では、脳組織内血流量およびATP濃度は有意差は認められなかったが、脳組織内水分量から評価した脳浮腫の程度は、拍動流群が、定常流群と比較して有意に低い水準にあることが観察された。 更に、現在臨床的には種々の方法で行われている、逆行性脳潅流法に関して、下大静脈からの脱血の有無が、脳保護効果に与える影響に関して検討を行い、以下の結果を得た。 1)下大静脈の遮断を行った群では、遮断をせず脱血を行った群と比較して、脳組織内血液流量では差がなかったにも関わらず、酸素消費量及び、二酸化炭素排出量、大動脈への血液還流率が有意に増大していることが観察された。このことは、下大静脈脱血群では、水素クリアランス法では観察されるものの、酸素消費及び二酸化炭素の排出には関与しない血流の存在が考えられ、逆行性に送血された血液が、脳組織レベルで、静脈から静脈へシャントしている事を示唆するものと考えらた。したがって、逆行性脳潅流時は、下大静脈の脱血を遮断することにより、このシャント血流量を減少させ、有効な脳組織内血流の確保が期待でき、より効果的な脳組織保護作用が期待できるものと考えられた。
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[Publications] 野島 武久,森 渥視,渡田 正二,尾上 雅彦,杉田 隆彰,白石 昭一郎,中嶋 康彦,田畑 良宏,松野 修一: "超低体温下逆行性脳潅流法の実験的検討ー拍動流を応用した逆行性脳潅流についてー" 日本低体温研究会会誌.