1991 Fiscal Year Annual Research Report
癒着性中耳炎の後遺症(真珠腫ならびに感音難聴)の成立機転に関する研究
Project/Area Number |
03454409
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
森山 寛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教授 (60125036)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 康博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (10198103)
荒井 秀一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (70193042)
関 哲郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (50196945)
矢部 武 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (00221648)
真崎 正美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (80147355)
|
Keywords | 癒着性中耳炎 / 真珠腫 / 感音難聴 / 光顕的観察 / 電顕的観察 |
Research Abstract |
臨床的検討として過去に手術した16歳以上の癒着性中耳炎48例について、骨導聴力値を単純性中耳炎のそれと比較したところ、明かな骨導値の低下が認められた。とくに高音部での聴力低下が著しいことから、内耳窓窩における長期にわたる病変(肉芽組識、黄褐色の貯留液の存在など)による内耳窓膜を介しての炎症の波及による可能性が示唆された。また癒着性中耳炎の表皮および表皮下を光顕的に観察してみると、同一症例においても鼓膜の部位による違いがみられるが、線維性変化の強いものから上皮下の肉芽形成がみられる炎症像を示すものまである。そして一般的には鼓膜後上部においてリンパ球や単球浸潤を伴う慢性炎症像を示す例が多くみられた。このことは癒着性中耳炎から緊張部型真珠腫へ移行する要因の一つにあげられる。また上皮は数層の細胞からなる薄い上皮の例から、基底細胞の増殖が旺盛で厚い上皮を示すものまで様々あるが、これは上皮下の炎症の有無と密接に関係している。また殆どの例では鼓膜固有の線維層は消失し、新生したコラ-ゲン線維の増殖を認めるが、なかには鼓膜本来の線維層が残存している症例もあった。この癒着性中耳炎の鼓膜固有層について電顕的に観察したところ、次の3つのタイプに分類された。1)炎症性肉芽型:鼓膜の著しい肥厚と炎症細胞浸潤および弾性線維の増生を伴う線維性肉芽増殖、2)癒痕組織型:鼓膜の肥厚と弾性線維増生を伴う不規則なコラ-ゲン線維増生、3)硝子型:鼓膜の菲薄化とコラ-ゲン線維の崩壊、消失ならびに硝子様変性による無定型基質の沈着。また基底細胞層には釘脚様構造の形成が認められた。そして表皮層の肥厚と角化亢進が見られた例では鼓膜内に埋没した表皮層の破片が極性を逆転して増殖している所見がみられ、真珠腫への移行の可能性も示唆された。この様に様々な変化がみられ、今後さらに継続して真珠腫への移行機序についても検討する。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 森山 寛,他: "癒着性中耳炎より緊張部型真珠腫への移行型(前真珠腫)について" 耳鼻咽喉科展望. 34. 39-45 (1991)
-
[Publications] 森山 寛,他: "癒着性中耳炎の病態" 耳鼻咽喉科展望. 34. 185-193 (1991)