1992 Fiscal Year Annual Research Report
脈絡上板の生理的機能に関する研究ー特にカルシウム濃度維持機構についてー
Project/Area Number |
03454413
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平井 恵二 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (70156628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船田 みどり 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (10143554)
所 敬 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20013865)
片山 芳文 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (20014144)
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Keywords | 脈絡上板 / 細胞内カルシウム濃度 / fura-2 / ATP / 細胞内情報伝達系 |
Research Abstract |
有色家兎眼球の脈絡上板は、細胞外にATP(10-100μM)を潅流投与すると細胞内カルシウムイオン濃度(〔Ca^<2+>〕_1)が増加する。他のプリン関連化合物質の〔Ca^<2+>〕_1上昇作用の強度順位はATP-γ-S(] SY.gtoreq. [)ATP>ADP>>AMP=アデノシンであった(P_2-プリン受容体に相当する)が、特異的拮抗薬(β,γ-メチレン ATPと2-メチルチオ ATP)や特異的遮断薬(ブリリアントブルーGとリアクティブブルー2)が無効であったため受容体サブタイプを特定できなかった。また、細胞外ATPの〔Ca^<2+>〕_1上昇作用はフォスフォリパーゼC抑制剤(コンパウンド48/80やネオマイシン)や、イノシトール3燐酸受容体遮断薬(ヘパリン)で抑制されたことから、細胞内情報伝達系(フォスファチジルイノシトール代謝系)が関与していると考えられる。一方、脈絡上板に無カリウムクレブス液を潅流すると、脈絡上板の〔Ca^<2+>〕_1は独特の三相性の変動を示した。即ち急速な〔Ca^<2+>〕_1の増加とそれに引き続く急速な減少および再度の増加である。種々解析実験の結果、最初の増加相は細胞外液からのCa^<2+>流入、二番目の減少は細胞内貯蔵部位への取込み、そして再度の増加は細胞内貯蔵部位からの放出と考えられる。事前にATPを短時間潅流投与しておくことによって、無カリウム液による〔Ca^<2+>〕_1変動のうち二相目の細胞内貯蔵部位へのCa^<2+>取込みが長時間延長された。これは細胞外ATPの刺激により、細胞内部の〔Ca^<2+>〕_1維持機構が変調を受けたためと考えられ、これが細胞内情報伝達系とどのような関係にあるかは今後の研究課題である。 以上の研究結果から、これまで暗箱様の遮光効果程度の生理的役割しか考えられていなかった脈絡上板にはATPの受容体があって、細胞内情報伝達系を介する〔Ca^<2+>〕_1維持機構が存在し、眼機能における何らかの重要な生理的役割を果たしていると結論された。又、通常は〔Ca^<2+>〕_1維持に関与する複数の機構が同時に働くため個々の機能や性質を個別に検討するのは困難だが、脈絡上板の無カリウムクレブス液潅流実験では三つの機構が独立して発現するので、〔Ca^<2+>〕_1維持機構の解析に極めて有用な標本である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] HIRAI,K.: "ATP-Activated Ca^<2+>-uptake of the suprachoroid in rabbit eyes." The Japanese Journal of Physiology.41. S42- (1991)
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[Publications] 平井 恵二: "Suprachoroidの細胞内カルシウム濃度維持機構についての研究" 日本眼科学会雑誌. 95. 285- (1991)
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[Publications] 廣瀬 晶: "脈絡上板組織のカルシウムイオン取込みに対するATPの作用" 日本眼科紀要. 42. 1385-1392 (1991)