1992 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄反射の興奮性と咀嚼との相関に関与する中枢神経機構の生理学的解析
Project/Area Number |
03454426
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中村 嘉男 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (10010026)
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Keywords | 下腿筋 / H反射 / 咀嚼運動 / fictive mastication / 促通 / 非相反性 / 運動ニューロン / 興奮性上昇 |
Research Abstract |
昨年度の検索によって、ヒトのヒラメ筋H反射は、咀嚼運動およびリズミカルな顎運動遂行中に持続的に促通を受けることが明かにされた。しかし、(1)下腿筋H反射の促通の様式が相反性か非相反性であるか、(2)この促通に口腔内機械受容器からの感覚精報が不可欠の役割を果たしているか、(3)この促通に運動ニューロンの興奮性の上昇が関与するか、は明かでなかった。そこで今年度は、これらの点を解析した。 ウレタン麻酔下のウサギで、下腿伸筋を支配する脛骨神経および下腿屈筋を支配する総腓骨神経にそれぞれ2対の銀線双極電極を装着し、近位の電極を介する刺激によって誘発される単シナプス性反射電位(H反射を誘発する遠心性発射活動)を遠位の電極で記録し、皮質咀嚼野連続電気刺激によって誘発される咀嚼運動時の動態を検索した。その結果、(1)どちらの神経の反射電位も、咀嚼運動時に持続的に促通される、(2)この促通の程度は、閉口運動相と開口運動相との間で有意差はない、ことが明らかになった。また、非動化後、皮質咀嚼野刺激により誘発されるfictive masticalionを舌下神経のリズミカルな群発発射でモニターして、これに一致する脛骨神経および総腓骨神経の反射電位の変化の検索により、(3)どちらの反射電位もficcive masticationに一致して持続的促通を示す、ことが判明した。つぎに、脛骨神経および総腓骨神経それぞれの刺激によって腰腿前角運動ニューロンプールに誘発される逆行性細胞外電位を記録し、(4)どちらの神経刺激による逆行性電位も、皮質咀嚼野刺激による咀嚼運動時に持続的に振幅が増大する、ことを見いだした。以上の結果は、(1)咀嚼運動遂行中の下腿筋のH反射は持続的に非相反性促通を受ける、(2)口腔内機械受容器からの末梢性入力はこの促通に不可欠ではない、(3)この促通には、これらの筋を支配する運動ニューロンの興奮性の上昇が関与している、ことを示している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hagiya,N.,Miyahara,T.,Ohyama,T.& Nakamura,Y.: "Modulation of soleus H-feflex during rhythmical jaw movements in humans" J.Dent.Res.71. 1044-1044 (1992)
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[Publications] 宮原 隆雄,萩谷 昇,大山 喬史,中村 嘉男: "噛みしめに伴うヒトヒラメ筋H反射の促通動態" 脳波と筋電図. 120. 216-216 (1992)
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[Publications] 萩谷 昇,宮原 隆雄,田中 立弥,大山 喬史,中村 嘉男: "顎運動時にみられるウサギ後肢単シナプス反射の変調" 歯基礎誌. 34(キツ録集). 172-172 (1992)