Research Abstract |
歯科および整形外科領域で用いられている金属材料の細胞毒性試験を行う場合,動的抽出による方法は有効な手段である.本研究では各種金属材料を種々な抽出液中で動的抽出を行い,そこで得られた摩耗粉の細胞毒性をしらべ,in vitroにおける生体用金属材料の細胞毒性試験法の確立を目ざした. 金属材料として,純Ti.Tiー6Alー4V合金,NiーTi合金,CoーCr合金および316Lステンレス鋼を,抽出液には蒸留水,リンゲル液,PBS(ー),MEMおよび0.4%アルブミン含有MEMのそれぞれ5種類を使用した.抽出条件は,240rpmで7日間にわたり旋回抽出した.その後,抽出液をフィルタ-で濾過し,フィルタ-上に残った摩耗粉を細胞に作用させ,細胞生存率を測定した.この結果,金属材料の種類によって摩耗粉の細胞生存率は異なっていた.すなわち,純Ti,Tiー6Alー4V合金では抽出液による細胞生存率への影響は認められず,すべてが高い細胞生存率を示していた.一方,NiーTi合金,CoーCr合金および316Lステンレス鋼では抽出液の種類によって摩耗粉の細胞生存率は異なっていた.蒸留水あるいはPBS(ー)中で生成した摩耗粉では,細胞生存率の減少が見られた.逆に,リンゲル液,MEMあるいは0.4%アルブミン含有MEMでは高い細胞生存率を示していた.また,濾液中の組成元素の溶出量を見ると,0.4%アルブミン含有MEMで最も多く,次いでMEM,リンゲル液の順であった.蒸留水あるいはPBS(ー)での溶出量はわずかであった. 以上の結果より,生体内の使用状況を考慮し,かつ促進劣化を含めたシミュレ-ションをめざす動的抽出条件下では抽出液の組成,すなわち塩類,アミノ酸やタンパクなどが溶出や摩耗粉の生成過程に関与することが示唆された.したがって,動的抽出法によって摩耗粉を含めた細胞毒性試験を行うに当たって抽出液の選択が重要であることが判明した.
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