Research Abstract |
動的抽出法による生体用金属材料の細胞毒性試験法を確立する目的で、各種金属材料を組織培養液中で200rpmの旋回条件で5日間および240rpmの旋回条件で1,3および5日間あるいは静置条件で5日間にわたってそれぞれ抽出した。得られた抽出液と濾液をL-929細胞に作用させ,細胞生存率を求めた.また,抽出液中のNaイオン濃度の変化をイオンクロマトグラフによってしらべた.実験材料は,前年度の結果を考慮し,タイプIV金合金,金銀パラジウム合金,低融銀合金(銀インジウム合金,銀スズ合金),Ni-Cr合金,Co-Cr合金および純Tiとした. 純Tiでは,いずれの抽出条件においても細胞生存率はほぼ100%を示した.一方,200rpm,5日間の動的抽出の場合,Co-Cr合金,タイプIV金合金および金銀パラジウム合金で抽出液の原液でわずかな細胞生存率の低下を示した.一方,Ni-Cr合金,銀インジウム合金および銀スズ合金では,抽出液および濾液の原液で著しい細胞生存率の低下を示した.240rpmの動的抽出の場合,抽出期間の増加と共に細胞生存率の低下は大きくなり,5日間抽出後には純Tiを除く6種類の合金で細胞生存率の著しい低下で認められた.240rpm,5日間の動的抽出後の細胞生存率は,純Ti>タイプIV金合金,Co-Cr合金>金銀パラジウム合金>Ni-Cr合金>銀インジウム合金>銀スズ合金の順に低下した.アルミナ球とジルコア球を比較すると,アルミナ球による抽出の方が,細胞生存率の低下が著しかった.これに反して,静置条件で5日間抽出した場合には,各試料とも100%近い細胞生存率を示した.また,抽出液中のNaイオン濃度は,前処理法など技術的な問題点が存在し,明確な差を認めなかった. 動的な抽出法で得られた細胞生存率の結果は,静置条件下と異なっていた.これら材料の生体内における使用実態を考える時,in vitroで動的な抽出を行った上での細胞毒性試験を実施することの重要性が明らかとなった.さらに、今回の実験結果から,動的な抽出条件としては240rpmで5日間行うのが望ましいと考えられる.
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