1991 Fiscal Year Annual Research Report
モルモットにおけるビタミンC合成不能の起因となる遺伝子の構造決定と遺伝子治療
Project/Area Number |
03454549
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Research Institution | Institute of Applied Biochemistry |
Principal Investigator |
錦見 盛光 (財)応用生化学研学所, 副所長・兼部長 (20022816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 敏秀 (財)応用生化学研究所, 研究員 (50224720)
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Keywords | アスコルビン酸 / ビタミンC / モルモット / 壊血病 / 遺伝子欠損 / グロノラクトン酸化酵素 / 偽遺伝子 / 塩基配列 |
Research Abstract |
モルモットは、ヒトと同様にグロノラクトン酸化酵素(GLO)を欠損しているためビタミンCを合成することができない。本研究において、モルモットにおけるGLO欠損の原因を遺伝子レベルで調べ、次のような結果を得た。ラット肝臓のGLOに対するcDNAをプロ-ブとして用い、EMBL3で作ったモルモットのゲノムDNAライブラリ-からGLO遺伝子のクロ-ニングを行った。得られたクロ-ンのうち重なりを持つ2個について制限酵素地図を作製しつつエキソン部分を特定し、その塩基配列を決定した。ラットのGLO遺伝子は12個のエキソンと11個のイントロンより構成されるが、モルモットではエキソンVの全領域とエキソンVIの3'部分で84塩基対の欠失が認められた。これらの欠失がクロ-ニングの過程で人工的に生じたものではないことをモルモットのゲノムDNAを鋳型として用いてPCR実験で確かめた。この他にモルモットの遺伝子ではエキソンVIの残りの部分で2塩基対の欠失があり、GT/AG則に合わないイントロン・エキソン境界が一つ存在した。ラットとモルモットの間で相同性は塩基配列では83%、アミノ酸配列では79%であった。アミノ酸配列の比較では非保存的置換が全置換の半数以上もあり、三つの終止コドンも存在した。これらの事実から、モルモットのGLO遺伝子は、モルモットの進化の過程で機能を停止して以来、撰択圧を受けなくなったためランダムに変異を蓄積してきたと考えられる。ラットとモルモットの間で同義置換数と非同義置換数を求め、モルモットでは非同義置換も同義置換と同じ速度で起きてきたものと仮定し、両者の分岐が6500万年前として計算すると、モルモットがGLOを欠損したのは約2000万年前以降であると推定された。
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