1991 Fiscal Year Annual Research Report
脳の老化過程の二元論的解析に関する基礎的研究ーカニクイザルを用いたMRIによる画像解析を中心にー
Project/Area Number |
03455009
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野口 淳夫 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (80091916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長 文昭 国立予防衛生研究所, 筑波支所, 室長 (30072929)
吉澤 卓 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (00210667)
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Keywords | MRI / AGING / BRAIN / ニホンザル(Macaca.fuscata) / カニクイザル(Macaca.fascicularis) |
Research Abstract |
各種霊長類の脳のMRI像 ツパイ、リスザル、ミドリザル、カニクイザル、アカゲザル、ニホンザルの脳について多様な条件で撮像し、各種霊長類の生物学的特性とモデルとしての特性の評価を行った。3種のマカク属サルの脳は、大きさこそ違うがよく似ている。しかし全体的バランスからニホンザルでは、大脳特に前頭葉が発達しており、脳の大きな動物ほど解像力が増すこともあって、ヒトのモデルとして用いることにメリットがあるものと考えられた。 高齢ニホンザル脳で異常所見を発見ーヒトの老化との異同?ー 本年度までの知見では、老齢カニクイザルの脳の老化像はヒトと著しく異なり、動脈硬化に起因するlacunaeやPVHIが全く見られず、脳の萎縮も殆ど見られない。淡蒼球や被殻などにあたる部位に、paramagneticな物質の集積が見られる。サル類では老化しても、ヒトの様な老化像が見られない理由は、ヒトの脳の老化は、動脈硬化などを原因とする血管系の老化と、神経細胞を中心とする脳細胞群の老化(脱落、萎縮)の二元性の現象であるが、サルでは前者が遅れて発現するからであると仮定した。以上の知見が、マカク属サルに普遍的な現象か、また一層加齢の進んだサルではどうかについて検討するため、本年は老齢ニホンザルを用いた。その結果23才齢のサル(♀)では、老齢カニクイザルとほぼ同様の結果が得られ、萎縮、lacunaeやPVHIなどは観察されず、また淡蒼球や被殻などにあたる部位にparamagneticな物質の集積が見られた。ところが28才齢のサル(♀)では、大脳後頭葉から側頭葉にかけて皮質灰白質部に信号強度の低下を示す画像を得た。この異常信号は、T1延長画像で著しくT2延長画像ではあまり顕著ではない。この現象がサル類の脳の加齢に伴う現象であることは確実である。一般的にヒトの老化脳では、白質部の変化を原因とするT2信号強度の増加が見られるので、今回得られた知見はサル特異的現象と思われ、局所になんらかの物質的変化(代謝異常など)が生じている可能性を示唆する。また26才齢ごろのカニクイザルや23才齢のニホンザルでは、このような現象を認めなかったから、サル類の脳の加齢過程では血管の老化が相対的に遅れ、ヒトの脳の老化とは異なった所見を呈する傾向があるとしても、臨界期を過ぎると、急激に脳の実質の退行性変性が進行するものと考えた。
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[Publications] A.Noguchi et al: "A few remarks on aged monkey brain bymaghetic resonance imaging" PRIMATOLOGY TODAY,Eleseuior Amsterdam. 461-464 (1991)
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[Publications] K.Itashika,K.Teruo,A.Noguchi: "Major histocompatibility comples of cynomolgus monkey(Macaca fascicularis)" PRIMATOLOGY TODAY.Elesevior Amsterdam. 647-650 (1991)
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[Publications] 吉澤 卓 他: "重水素磁気共鳴を用いた脳血流量測定法の開発に関する基礎的検討" 日本磁気共鳴会学. 10.4. 240-246 (1990)
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[Publications] Takashi Yoshizawa et al: "Deufcriun Magnetic Resonance Applied to the Mescrement of Brain Blood Flom in Rats" Ninth Arrual scientific Meeting and Exhibition.576 (1990)
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[Publications] Takashi Yoshizawa et al: "Alterhafive Tracer kinetic Analytics Modified wits “Siffusional Delay"obserived by Debtevium MRBrain Blood Flow Meosurement." Tenth Annucl Sciientific Meeting and Exhibition. 798 (1991)
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[Publications] 長 文昭,鴻野 操: "実験用カニクイザルの流産および胎仔死亡の超音波診断装置による調査" Exp Anim. 39. 291-294 (1990)