1992 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ礁における石灰化速度と二酸化炭素変動のモニタリング
Project/Area Number |
03455019
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大森 保 琉球大学, 理学部, 助教授 (00045022)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊佐 英信 琉球大学, 理学部, 助教授 (20045040)
渡久山 章 琉球大学, 理学部, 助教授 (50045001)
平良 初男 琉球大学, 理学部, 教授 (70044998)
棚原 朗 琉球大学, 理学部, 助手 (00217100)
|
Keywords | サンゴ / サンゴ礁 / 二酸化炭素 / 石灰化 / 光合成 / 環境変動 / 有機物生産 |
Research Abstract |
大気中の二酸化炭素濃度が毎年約1ppmずつ増加している。この量は化石燃料の消費に伴って大気に放出されるCO_2量の約半分である。残りの半分がどこに吸収されたのか、陸上植物、土壌、海洋などについて検討されているがよくわかっていない。 炭酸塩堆積物は地球表層に分布する炭素の約70%を占めており、地球史的にみれば二酸化炭素のリザーバーとして機能したことは確かである。炭酸塩の生成ー溶解過程は地球表層の炭素循環の重要な位置を占めている。しかし、大気ー海洋間でのCO2交換速度に比較して炭酸塩の循環速度が遅いことから、地球温暖化のように100年のオーダーの短期間に炭酸塩の形成過程が大気CO_2を規制することは無いと考えられてきた。また、水溶液から炭酸塩が無機的に生成されるときにはCO_2が放出されることから、炭酸塩の生成はむしろ海洋から大気への放出に寄与すると考えられてきた。しかし、大気ー海洋ー地殼をめぐる二酸化炭素フラックスについて十分な精度での観測は行われてこなかった。 サンゴ礁は生物の活動が活発で生物生産の高い場所であり、光合成と石灰化によって効果的に二酸化炭素の固定が行われている。それゆえに大気中の二酸化炭素濃度変動に対してサンゴ礁はいかなる寄与をするのかについて評価できる観測を行うことが重要である。サンゴ礁および水槽によるサンゴ飼育実験をおこなった。 その結果以下のことが明らかにされた。(1)昼間には光量の増加とともに光合成と石灰化が同期しておこなわれる。(2)このとき、海水中の炭酸アルカリ度、全炭酸、二酸化炭素濃度は減少し、二酸化炭素の効果的な固定がおこなわれている。石灰化過程が光合成過程とともに進行しており、炭酸塩の生成による二酸化炭素の増加はない。(3)石灰化(無機炭素生産)と光合成による有機炭素生産の比1:3で有機物生産が優位であった。(4)サンゴの生育は光合成と石灰化により二酸化炭素の固定が行われ、短期的には二酸化炭素を吸収することがわかった。生産された有機物の種類と量、およびその循環過程の解明が重要である。
|
-
[Publications] 大森 保: "サンゴの石灰化と二酸化炭素の固定" 地調ニュース. (1993)
-
[Publications] 大森 保 他: "サンゴ礁における石灰化と二酸化炭素濃度" 地球化学会年会要旨集. 298- (1992)
-
[Publications] 藤村 弘行 他: "サンゴ礁における海水中の二酸化炭素濃度の測定" 地球化学会年会要旨集. 181- (1992)
-
[Publications] 大森 保 他: "沖縄トラフ海底熱水性堆積物の化学組成と同位体組成" 地球化学会年会要旨集. 201 (1992)
-
[Publications] 大森 保 他: "地球化学的観測からみた西表島群発地震" 月刊「地球」. (1993)