1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03555130
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柏原 士郎 大阪大学, 工学部, 教授 (70029164)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 隆司 大阪大学, 工学部, 助手 (20182694)
吉村 英祐 大阪大学, 工学部, 助教授 (50167011)
|
Keywords | 大深度地下 / 避難シミュレーション / 避難誘導 / 篭城区画 / 地下火災 / 安全化 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度までに得られた結果をもとにして,地下空間用の避難安全性評価システムの確立をめざした。それに先立ち階段の歩行上昇実験を行い,上方歩行避難が可能な限界が地下7階程度までであることを明らかにした。次いで,大深度地下モデル空間を対象とした避難シミュレーションを実行し,同規模・同階数であれば地上空間よりも地下空間のほうが火災時の人的被害が大きいという一般的な傾向を明らかにした。また,地下階数が7階程度までの「階段歩行による上方避難が可能な場合」には,出火階が地下深くなるほど,避難に有効な階段に誘導することが最終生存率の向上に有効であること,最終生存率は避難開始時刻,フラッシュオーバータイム,防火戸の開閉状態に大きく依存し,地下8階より深い「階段歩行による上方避難が不可能な場合」は,篭城区画を適切に配置することが,安全化の現実的かつ有効な手法であることが明らかになった。シミュレーション結果から,地下7階程度までは避難階段の構造を踊り場等の水平部分が非常に長い特殊な形態にすること,防火・防煙区画の信頼性をより高めることなどにより,現在の防災技術でも安全性を確保できる見通しがあるが,それ以深では経済的に見合わない大きな篭城区画を確保する必要があることが明らかになった。また,現時点では大深度地下における人間の心理状態がほとんど解明されていないこと,有効な消防・救助手段がないことから,大深度地下空間の開発は慎重に検討すべきであり,やむをえず開発する場合も公共性がきわめて高く,かつ不特定多数の人が利用しない一部の用途に限定すべきであるとの結論を得た。
|
-
[Publications] 榎木靖倫: "地下空間における災害発生の実態に関する研究" 日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系. 32. 361-364 (1992)
-
[Publications] 川副正博: "追跡調査に基づく梅田地下街における歩行者の流動実態に関する研究" 日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系. 32. 365-368 (1992)
-
[Publications] 吉村英祐: "大深度地下利用における防火・避難上の安全性に関する考察" 日本建築学会大会学術講演梗概集 E. 805-806 (1992)
-
[Publications] 中西哲也: "案内標識と誘導灯の分布実態とその見やすさに関する考察-梅田地区地下街における場合-" 日本建築学会近畿支部研究報告集・計画系. 33. 501-504 (1993)