Research Abstract |
最近,高分子の結晶領域における構造について,固体高分解能NMRの測定などにより,従来行なわれたX線解析の結果とはかなり異なった見解が報告されている.場合によっては,いくつものグル-プによって最大限の努力で確認されてきている構造ですら,X線の結果に疑問がもたらされている.もちろんNMRのデ-タ解釈に疑問があることも十分考えられはするが,しかし,それにもかかわらず,このような疑問が放たれたことは,構造解析にたずさわる者にとっては大きな衝撃である.一つ大きな理由としては,高分子のX線反射数が極めて少ないこと,強度の正確な評価が難しいことなどが挙げられる.しかし残念なことには,これらの問題点の決定的解決策は依然として確立されていない.我々は最近登場してきたイメ-ジングプレ-ト方式のX線反射デ-タ集積法に着目した.本研究は,このシステムを高分子に適用し,従来にも増して信頼性の高い構造デ-タを与える一般的システムの開発を目的としたものである. 第一年度(平成3年度)は,イメ-ジングプレ-トのセッティングおよび反射デ-タ集積法の開発を中心に,研究を遂行した.ポリエチレン,ポリ(3-アルキルチオフェン),液晶性高分子などについて,無配向試料のデバイ-シェラ-写真および配向試料のX線繊維図形を測定したが,感度が非常に高く,通常の管球式X線光源と写真感板との組み合わせによる場合に幾日もかけていた露光が,僅か数分から数十分で済むこと,また,非常に強い反射から弱い反射に至るまで一つのスケ-ルで強度評価の出来ることが判明した.相転移観測を目指したX線図形の温度変化測定なども能率良く実行できることを確認した.ただし,従来のイメ-ジングプレ-トシステムは蛋白質単結晶の構造解析を目指して開発されてきているため,通常の高分子物質の場合の様に,極めてブロ-ドな反射の面積強度定量評価や位置の読み取りなどには適用できない.そこで新たにコンピュ-タ-プログラムを書き,高分子専用の,効率の高い,かつ,より精度の高いデ-タ集積システムを現在開発中である.
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