Research Abstract |
牛胚移植においては,最適受胚牛の選定のための臨床的診断技術面が最も遅れていることから,牛胚移植の普及は期待されるほど進展していない.これは,胚移植に関する研究が過排卵誘起,採卵,卵胞卵子,体外授精,胚の培養・操作・保存・移植方法等に偏重し,受胚牛の選定法に関する本格的な研究はほとんどなされなかったためである.本研究は,牛の発情期から黄体期(5〜9日)における生殖内分泌学的な根拠のある生殖器臨床診断法を確立し,これを利用して最適受胚牛の選定法を作出して,胚移植の受胎成績を飛躍的向上させ,胚移植の普及に寄与しようとするものである. 昭和62年以来,研究代表者の研究室では,臨床的に正常と判定できる発情期の適期に人工授精した乳牛の7〜9日後の子宮内には,80%以上の高率で移植可能胚が存在することを確認してきているので,これをベ-スとして,平成3年度は,これらと同等の時期の同等の卵巣及び副生殖器臨床所見を示す乳牛について,末梢血液中のゴナドトロピン(LH,FSH),プロジェステロン及びエストラジオ-ルの濃度を調べ,すでに多くの研究者によって報告されている同時期の生殖内分泌パタ-ンと比較した.その結果,これらが全く同等であったことから,本研究スタッフが定めている直腸検査等の臨床診断法により,最適受胚牛として選定できる個体の排卵後5日目の新黄体の高さは1.5Cm<である等のほか,子宮,子宮頚管,腟,外陰部及び腟粘液の所見についても特定できることが明かとなった.目下,これらの方法の再現性の確認とさらなる改善点の検出を目的に,フィ-ルド研究分担者を中心に,研究協力者の支援を得て野外の多数の胚移植牛及び人工授精牛を対象に実験及び材料採取を継続中(平成4年度が最終年)である.
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