1992 Fiscal Year Annual Research Report
新たに考案したシャントチューブによる門脈下大静脈血行温存,肝移植手技の開発
Project/Area Number |
03557054
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
草野 満夫 旭川医科大学, 医学部, 講師 (70091569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 法康 東レ株式会社, メディカル開発推進部, 部長
紀野 修一 旭川医科大学, 医学部, 助手 (20234312)
山本 哲 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50125415)
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Keywords | 肝移植 / 門脈・下大静脈バイパス / 肝全剔 / 無肝期 / 抗血栓性チューブ |
Research Abstract |
肝胆道系悪性腫瘍、肝移植手術においては、門脈・下大静脈シャント法としてBiopumpによる体外バイパス等が用いられているが、より簡便な最短距離でのバスパス法として抗血栓性(アンスロン)S型門脈下大静脈シャントチューブ(以下S-Tube)を考案し、その有用性を検討した。素材は塩化ビニールで、下大静脈(以下IVC)貫通部分の外径は11mm、門脈(以下PV)挿入部分の外径は7mmで、IVC貫通部分下端に、側孔をもうけ、肝上・下部IVC部、PV挿入部にターニケット滑り止めのnotchを作成し、実験には体重9〜15Kgの雑種成犬を用いた。S-tubeの両端をIVC、PVに挿入しバイパスを完成させる。大腿動脈(以下FA)圧、SMV圧を測定した。シャント前→クランプ中→シャント後のFA圧、SMV圧の変動は、FA圧(mmHg):160.7±26.7→89.6±38.0→133.8±29.5、MV圧:17.2±6.5→47.9±20.2→22.6±16.2シャント後の各々の圧の回復は、有意差をもった変動であった。開腹からシャント完成までは、35分前後で、血管遮断時間は、PVで2.9±1.6分、IVCでは3.0±1.6分であった。シャント後犠牲死までは、最長17時間まで確認しており、その間、PV圧の変動と腸管の鬱血は軽微で、S-Tube内外に血栓の形成は認められず、S-Tubeの開存性はきわめて良好であった。 アンスロンカテーテルは、1982年中尾らによって門脈・大腿静脈バイパス法として臨床応用されており、その優れた抗血栓性、と全身の血液凝固系への影響のないことによる有益性は、外科手術において極めて貴重である。これらの特性を有するS-Tubeによるバイパス法は、今回の成績から、一つの術野の中に、短時間かつ簡便に作成できるバイパス法として期待でき、安全な肝全摘モデルの作成、肝移植への応用が可能である。
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