1992 Fiscal Year Annual Research Report
新しい免疫抑制物質の医薬品への応用のための生化学的研究
Project/Area Number |
03557103
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川嵜 敏祐 京都大学, 薬学部, 教授 (50025706)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小堤 保則 京都大学, 薬学部, 助手 (70205425)
伊藤 信行 京都大学, 薬学部, 助教授 (10110610)
井上 謙一郎 岐阜薬科大学, 教授 (40025713)
藤多 哲郎 京都大学, 薬学部, 教授 (40027024)
|
Keywords | 免疫抑制剤 / Isaria / ISP-1 / シクロフィリン / シクロスポリンA |
Research Abstract |
イサリア属菌より得られた免疫抑性剤であるISP-1の受容体を単離する目的で、ラット脾臓をホモジナイズした後、超遠心機によって膜画分を単離した。この画分を用いて、ISP-1結合実験を行ったところ、ISP-1結合能は認められたが、ISP-1に対するKmは12.3μMと算定された。このことは、ISP-1との結合が特異的なものではなく、むしろISP-1の非極性基と膜画分の脂質部分との非特異的なものであることを意味していた。既に報告をしたように、可溶性画分にも特異的な結合が認められないことを考えあわせると、ISP-1は、他の免疫抑制剤とは異なり、細胞内に特異的な受容体が存在しない可能性が示唆された。 次に、ISP-1の作用機構について検討を加えた。現在、主要な免疫抑制剤として知られているcyclosporinA(CsA)は、細胞内のシトゾルに存在するシクロフィリンと呼ばれる特異的なペプチジルプロリルイソメラーゼ(PPIase)と結合してその活性を阻害することが知られている。さらに、この複合体は細胞質にあるカルシニューリンというタンパク質に作用し、そのフォスファターゼ活性を阻害することによりIL-2産生抑制を引き起こしていることが明らかにされている。そこで、これら一連の経路に対してISP-1の作用を検討した。まず、シクロフィリンのPPIase活性に対するISP-1の影響を調ベたところ、ISP-1はこの活性を全く阻害しなかった。次に、カルシニューリンに対して直接抑制的に働くかどうかを検討したが有意な結果は得られなかった。最後に、IL-2産生に対する直接の影響を調べたところ、ISP-1を生理的有効濃度の30倍加えるとIL-2mRNAの量を約50%程度阻害したものの、生理的有効濃度付近では全く影響は見られなかった。以上の結果、ISP-1はT細胞活性化シグナル経路のうちIL-2産生誘導までの経路ではなく、産生されたIL-2がその受容体に結合した後の経路を阻害している可能性が考えられる。
|
Research Products
(1 results)