1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610002
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松本 正男 山口大学, 人文学部, 助教授 (00127789)
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Keywords | 概念 / フィヒテ / 「反省法側」 / 「知的直観」 / 「知識学」 / エ-ネジデ-ムス=シュルツェ / ラインホルト / 「意識律」 |
Research Abstract |
概念の機能に関するフィヒテの理解の基本的なかたちは、彼が「反省法則」に言及する場所において示されている。本研究は当初、この理解の内実を剔抉する作業を、彼の〈概念〉理解の行き着く先である「像」論の検討から始めようとした。しかしこの検討を進めていくうちに、後期フィヒテの中心理論をなすこの理論が、前期の記述の中に表立って現れていた「知的直観」の概念と、予想以上の連続性を持つことに気づかれた。後期において既にかなり完成されたかたちをとっているフィヒテの「反省法則」的〈概念〉理解は、初期の「知的直観」概念導入の経緯に遡る徹底した再検討を欠いては、十分に明らかにできないことに気づかれたのである。そこで本年度は、「知的直観」がフィヒテの哲学的思索の中心概念として導入される必然性、従ってまた「知識学」の不可避性を再検討するという基礎的作業に多くの時間を割いた。「知識学」は当初、エ-ネジデ-ム=シュルツェの批判からラインホルトの「根元哲学」を新たな基礎付けをもって擁護するという意図の下に生み出され、その基礎付けの構想を仕上げていく行程において独自の形態をとるに至ったものである。そこでは「意識律」と「矛盾律」の「限定」関係の如何、「表象」の本質的契機をなす志向性の可能根拠、「意識律」という「根元哲学」の最根本的な命題の客観的妥当性の確証根拠が主題的な問題として取り上げられ、この問題への解答提出へ向けて、認識の成立との連関における〈論理〉の位置づけ、認識の成立根拠を述べる根本命題の妥当性を基礎づけるべき方法の如何(特に理論性か、或いは特定の直観か)が検討されている。結果として本研究は本年度において、「生」が自己透明化する運動過程のなかで概念、及び論理の果たす機能を探るべき場所を再確認するという基礎作業に終始した、と言える。
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