1991 Fiscal Year Annual Research Report
帰納的説明および統計的説明の構造に関する方法論的諸問題の研究
Project/Area Number |
03610007
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
竹尾 治一郎 関西大学, 文学部, 教授 (00067448)
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Keywords | 科学的説明 / 演繹的説明 / 統計的説明 / 因果的説明 / 決定論 / 確率論的解釈 / 演繹主義 / 因果性 |
Research Abstract |
1.(1)ヘンペルは説明のDN(演繹的法則的)モデルを明らかにし,それを擁護する上で最大の貢献をしたが,またすべての正当な科学的説明がDNモデルであるとは決して言わなかった。HempelーOppenheim〔1948〕に続く論文で,彼は演繹的統計的(DS),帰納的統計的(IS)を練り上げて行った。彼の作ったこの3つのモデルが説明理論の標準的見解とみなされてきた。(2)経験科学に必要な論理的装置は演繹論理だけであるとする(特にポパ-によって強調された)立場を「演繹主義」(それには帰納法等の非演繹的推理を認めない推論上の演繹主義,DN説明だけを科学的説明と認める説明的演繹主義がある)とよぶと、ヘンペルは決定論者ではなかったが,IS説明の身分を決定論と一致するような仕方で扱った。(IS説明は本質的に多義的で,それを一義的にするとDN説明になる。)自然の基本法則のあるものは統計的と思われるので,説明的演繹主義は見直す必要がある。(3)DN説明は因果的説明となりうるかについて,「原因」が必要条件でしかないような現象の説明に関して問題が生じる。DN説明と因果的説明が一致するのはラプラス的決定論の場合である。しかし因果性を確率論的に解釈し,物理的過程とそれを引き起こす相互作用を示すことから(一般的,個別的)事実を説明するという説明の因果的モデルを考えることができる。(4)サモンのSR(統計的レリヴァンス)モデルは,科学的説明を非演繹的であるばかりか,非推論的であるとする立場であるが、これは(3)の因果的モデルによって置き換えることができる。またそれによって,SRモデルそのものの含む困難を避けることもできる。2.個別事象の非決定論的説明を与えうることの合理的根拠をえることによって、科学の実際的状況への応用のために必要な,応用科学における説明についての展望をうることができる。
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