Research Abstract |
本年度は,2年計画の本研究の最終年度にあたるため,研究計画の遂行につとめるとともに,従来の私自身の研究もあわせてまとめあげるよう全力であたった。 昨年度にひきつづき,研究テーマである認識論の諸問題を,『成唯識論』を中心とする法相唯識の詳細な議論に検証するとともに,他の唯識関係のサンスクリット語文献,チベット語文献をも広く尋ね,思想史的観点をふまえて問題の系統的な把握につとめた。 これらの研究を補強するため,北海道大学・三重大学に関連分野の学者を訪ね,意見交換を行うとともに,関系資料の調査・収集にあたった。 本年度の研究成果としては,唯識説における認識理論の展開を追求した論文をまとめることができた。これは,外界なくして認識が成立するというその構造がどのように考えられてきたのかを,弥勒・無著・世親・陳那,そして『成唯識論』等に辿ったものであ なお,従来,私は唯識思想の中,三性説の研究を行ってきた。三性とは,いわば言語世界・現象世界・本性世界のことで,これら三種の存在から世界を分析していく理論である。唯識という立場からして,当然,認識論とも深くかかわるものであり,本研究は,私の三性説研究の一環として行われたものである。本年度,本研究の遂行を通じて,私の三性説研究をまとめることができ,平成5年2月,『唯識思想論放ー三性説の哲学的解明』と題する論文を東京大学に提出,学位の申請を行うことができた。これは,ひとえに,本科学研究費補助金のお蔭である。深く感謝している次第である。学位論文が合格した暁には,公刊したいと考えている。 (本年度,報告書のほか,公刊した成果がないことは,以上の理由によるものである。)
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