1992 Fiscal Year Annual Research Report
幼児における文字の読み書きと読書の技能と信念に関する縦断的研究
Project/Area Number |
03610041
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
無藤 隆 お茶の水女子大学, 生活科学部, 助教授 (40111562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 喜代美 東京大学, 教育学部, 助手 (00242107)
柴坂 寿子 お茶の水女子大学, 生活科学部, 講師 (50221297)
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Keywords | 幼児 / 文字 / 読み書き / 読書 / 信念 |
Research Abstract |
本年度は、幼児期のかな文字の読みと絵本の読みとを2年間近くの縦断研究から調べることを目的として、3年度の研究を受け、その際の調査対象児を追跡調査した。また比較するために、新たな子どもを追加した。幼稚園年長児64名は追跡児であり、それ以外に、年中48名、年少32名を調べている。課題として、かな文字の読み、かなで書かれた自分の名前の読み、かなでの単語・文の読み、絵本の読み、読み書きと本の機能の理解と評価などを含めている。本年は特に絵本読みについての課題を充実させた。また分析としては、その調査時の分析に加えて、前年度のデータからの変化を見た。さらに、家庭や幼稚園での絵本の読み聞かせ場面の観察を補足的に行なった。以上の調査の結果から、文字の読みという働きと、読書という活動の対比と関連を検討した。その結果次のことが考察された。特に、文字を読むという行為は、幼児の日常においてそれ自体独立した活動を構成しない。始めは、少なくとも一部の子どもにおいては、名前を読むといった別の活動の一部として成り立っている。また50音表のような道具への接触の一部ともなっている。読書は、始め、親や保育者が読み聞かせるという形において独立した活動を構成して、独自の機能を持っている。それが次第に、一方で、読書が情報を得て、内容を楽しむということに焦点化してくる。他方で、文字が絵本を読むという活動の一部をなし、その理解に使われるようになる。子どもは年長くらいには絵と文字の双方を見て、内容を理解しようとする。同時に、文字を読むということは、多くの子どもにとって、それ自体が追求される活動になっていく。文字自体を読む練習や読む楽しみが成り立つのである。文字の機能の理解はむしろそこでは明確ではなく、文字の読み自体が意識されるようである。その次に、文字の読みを読書の下位過程とし、しかも理解に決定的な部分として扱うと思われる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 無藤 隆: "「幼稚園児のかな文字の読みと自分の名前との関連」" 発達心理学研究. 3. 33-42 (1992)
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[Publications] 無藤 隆: "「発達研究の現在:発達的アプローチの可能性」" 児童心理学の進歩. 31. 1-30 (1992)
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[Publications] 秋田 喜代美: "「幼児への読み聞かせに対する母親の捉え方」" 日本発達心理学会第3回大会発表論文集. -111 (1992)
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[Publications] 無藤 隆: "「自分の名前の読みとひらがな習得との関連」" 日本教育心理学会第34回総会発表論文集. -231 (1992)
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[Publications] 秋田 喜代美: "「絵本の読み方」とひらがな習得との関連」" 日本教育心理学会第34回総会発表論文集. -232 (1992)
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[Publications] 無藤 隆: "「読み書きに対する幼児とその母親の認識の検討」" 日本発達心理学会第4回大会発表論文集. -134 (1993)
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[Publications] 秋田 喜代美: "「幼児の読書意義に対する認識ー勉強・マンガ・TVゲームとの比較」" 日本発達心理学会第4回大会発表論文集. -133 (1993)
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[Publications] 無藤 隆: "「子どもの生活における発達と学習」" ミネルヴァ書房, 230 (1992)