1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610042
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
蘭 千壽 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90127960)
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Keywords | 能力の自己評価 / 自己高揚欲求 / 自己査定欲求 |
Research Abstract |
(1)能力の自己評価の諸理論に関する内外の文献を広く渉猟し,それらを能力の自己評価の働きが理想的な能力形成に向けての発達の一過程であるとする観点から批判を加えた。そして,この観点から,自他比較による自己高揚的,自己査定的,自己内比較による自己高揚的評価機能の3つを取り上げ,これらが全く独立したものではなく,重層的に相互に作用しあうとい能力の自己評価に関する重層モデルを検討した。 (2)このモデルから,能力についての評価の条件によって,自他比較による自己高揚的評価と自己査定的評価の両機能のどちらが優位に働くのかについて,自他のパフォ-マンス評価の安定性条件(4)×試行回数条件(7)を独立変数とし,課題と自己定義との関連性,比較他者との心理的な親密さ,比較対象・課題の選択を従属変数とする2要因計画の検討を行った。それによると,(1)能力評価が不安定なばあい,自己優位のときには関連性や親密さを高めたのに対して,自己劣位のときにはこれらを低めた。両条件とも協同・競争相手として最低得点者がまた能力不判別課題が有意に多く選択された。これらより,自己高揚欲求が働いたといえる。(2)能力評価が自己優位で安定しているばあい,関連性は高いが親密さは低いままであった。協同・競争相手として最高得点者がまた高低能力判別課題が有意に多く選ばれた。これらより,自己査定欲求が働いたといえる。他方,自己劣位で安定しているばあい,自分より少し高いか同じ得点者が,また低,高低能力判別課題が有意に選ばれた。関連性は低くなったが親密さは高いままであった。これらから自己高揚,自己査定の両欲求ともに働かなかったといえよう。つまり,能力評価が安定しているばあい,それが自己優位なのか劣位なのかによって評価行動に明確な違いがみられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 蘭 千壽: "能力の自己評価に関する理論的研究" 上越教育大学研究紀要. (1992)
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[Publications] 蘭 千壽: "能力の自己評価に関する実験的研究" 心理学研究. (1993)
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[Publications] 遠藤 辰雄,井上 祥治,蘭 千壽(編著): "「セルフ・エスティ-ムの心理学」(蘭千壽分担分)(1)7章対人感情と自己評価(pp.78ー88)(2)8章パフォ-マンスと自己評価(pp.89ー96)(3)18章セルフ・エスティ-ムの形成と学校の影響(pp.178ー199)" ナカニシヤ出版・中西健夫, 286 (1992)