1992 Fiscal Year Annual Research Report
触覚的パターン認識のための、知覚的表象に関するモダリティー間の比較研究
Project/Area Number |
03610063
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
和氣 洋美 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (80122951)
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Keywords | 知覚的表象 / 触パターン認識 / モダリティー間比較 / 主観的輪郭線 / 実物認識 / 図形認識 / 視覚障害 |
Research Abstract |
知覚的表象は実物の代用として機能し、外界の効率的理解に貢献する。しかるに、触覚表象による事物や外界の認識は困難であり、旨児の知育に不利益を与えている。 本研究は、触覚表象(触図)の認識を促進するための触覚的表示を模索し、視賞と触覚の比較から両様相における表象の意味と限界、図形印象の生成の特色を明らかにるために行われた。視覚障害者の事例研究と晴眼者に対する心理物理学的研究とから構情されている。(1)主観的輪郭線の生成の視触比較(2)触パターン認識の正答率、反応時間等の分析(3)視・触パターン認識に及ぼす情報カットの効果の検討を含み、前者は他に(1)低視力者での視・触による実物認識と図形認識の比較(2)触覚表象の獲得を知るための自由描画を含む。 結果の概要は以下の通りである。主観的輪郭線の生成は触覚においても認められた。身近な事物の立体線画は予想通り40%程度の低い正答率を示したが、透視図的表現をカットしたり、輪郭を残して内部の線をカットするなどの単純化により正答率は2倍に上昇した。ただし、単純化したために他の物と誤って認識されることもあり、図形ごとに必要不可欠の部分が何であるかが示唆された。このことは、原図形にノイズをかけて情報をカットする方法によっても確認され、視覚的対象認識に関してBiedermanらにより提唱されているRBC仮説が触パターン認識においても当てはまることが検証された。事例研究からは、視覚障害者は日常生活や教育の中で、触覚による実物認識と図形との照合や、自主的な描画を促される機会が希少であり、このことが触覚の限界に加えて、触パターン認識に困難をきたす可能性が示唆された。幼少期から多種のパターンの触経験が必要に支えられて、しかも楽しく行われるためには、如何にしてそれを動機づけることができるかが、残されたもう一方の課題であると考える。
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