1991 Fiscal Year Annual Research Report
祭りと現代社会ー祭りと「祭り的なもの」に表われる現代人の共同性志向と非日常性願望ー
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03610078
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
蘆田 徹郎 熊本大学, 教養部, 助教授 (20151053)
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Keywords | 祭り / イベント / 共同性 / 非日常性 / 祭りの日常化 |
Research Abstract |
本研究は、昨今の祭り・イベントブ-ムの検討をとおして、ポスト・モダンが云々される現代日本に潜んでいると推察される「共同性志向」と「非日常性願望」とを剔抉してその意味を確定し、そこからひるがえって現代の祭りの意義と問題点を考官しようとするものである。上の研究目的にてらして、本年度(初年度)はもっぱら広範な「祭り現象」に関する基礎資料の収集に努めた。具体的にはおおむね次のとおりである。 1.私の一連の祭り研究の発端となった熊本市・藤崎八旙宮例大祭の沿革と現状についての知見を補強するため、同宮に保存されている戦前の祭礼関係文書を収集(複写)した。2.昭和天皇の重体・死去と新天皇の即位の礼ならびに大嘗祭への国民の反応を、同天皇の重体にともなう祭りやイベントの「自粛」現象を中心に、主として新聞・雑誌記事によって追跡した。3.藤崎八旙宮例大祭と比較検討するため、佐賀県唐津市の「唐津くんち」(唐津神社例祭)の沿革と現状を新聞記事の検索ならびに簡単な観察調査をとおして概略把握した。なお、唐津くんちは、昭和天皇の重体にもかかわらず祭り・イベントを「自粛」しなかった数少ない例の一つである。4.平成3年12月の高知県知事選挙における橋本大二郎候補(現知事)陣営の選挙運動にみられる草の根型の広がりと熱狂は、関係者自身が述べているところによれば、一種の「お祭り」であった。選挙後、現地での関係者からの聞き取りと新聞記事の検索をとおして、高知県民がこの「祭り」に何を託したのか調べた。5.オウム真理教進出阻止をめぐる熊本県波野村の祭り的な一体感の高揚についても、ほぼリアルタイムで追跡している。 以上のような(予備的)調査研究をとおして、現代人の潜在的な「共同性志向」と「非日常性願望」の強さをあらためて確信することができた。残された課題は、それが意味するところを実証的に確定することである。
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