1991 Fiscal Year Annual Research Report
とくにすぐれた学術研究組織における研究業績の規定要因に関する日英比較研究
Project/Area Number |
03610145
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
塚原 修一 国立教育研究所, 教育政策研究部, 室長 (00155334)
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Keywords | 科学技術政策 / センタ-・オブ・エクセレンス / 研究組織 |
Research Abstract |
イギリス側のすぐれた研究組織として、ケンブリッジ大学分子生物学研究所をとりあげた。同研究所は、1953年にワトソンとクリックがDNAの二重らせんモデルを発見した場であり、その後は、分子生物学の世界的な研究の中心のひとつでありつづけてきた。 同研究所は、医学研究審議会(MRC)が大学内で運営している研究所のひとつである。イギリスでは、大学基金審議会(旧大学補助金委員会)と研究評議会の2つの資金源が大学へ資源配分をしているが、MRCはこの方形を望ましいものとみている。前者が平等的傾向をもち、後者が卓越した研究拠点に重点配分する機能をもつが、それらを異なる審議会が分担することによって相互干渉を防いでいると言うのである。 MRCの研究所は永続的なものではなく、研究所長の退任を機に閉鎖されたり、研究内容を一新することがある。これまで大学内にMRCが設立した研究所の約1/4は閉鎖ないし研究内容を変更している。研究所を学外に独立機関として設立せず、大学内部におくことは、すぐれた若手研究所者(とくにポスドク)の確保が容易であるとともに、研究機関を閉鎖したり路線変更するさいの柔軟性を高めるとみなされている。 分子生物学研究所は、研究費が非常に潤沢であり、各研究者はほとんど無制限に研究費を使用できる。このやり方が、すぐれた業績をあげる秘訣であるとする見解がある反面、(ほとんどの若手研究者がいずれはこの研究所を去っていくことから)若手研究者をかえってスポイルしているとの批判もある。 最近、他省庁や民間資金の大学への導入が議論されている。そうした資金を卓越した研究拠点への重点配分に活用して、大学に対する二重支援体制を構築するとは、日本の研究活動を活性化するうえで効果的な方策のひとつであると思われる。
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