1991 Fiscal Year Annual Research Report
北部九州およびその離島におけるシャ-マン的職能者の研究(特にその災因論をめぐって)
Project/Area Number |
03610155
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福島 邦夫 長崎大学, 教養部, 助教授 (60189933)
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Keywords | シャ-マン的職能者 / 災因論 / 都市部 / 周縁部 / カゼ / サハリ / 人格的 / 非人格的 / 生霊カゼ |
Research Abstract |
北部九州(長崎県,佐賀県,福岡県)の都市部や半島および島嶼部(両者をここでは仮に周縁部と呼ぶ)にはホウニン、ダイニン、トウニン等と呼ばれるシャ-マン的職能者が存在する。本年度はその災因論に関して研究を行なった。災因論とは災危(病気や不幸)の因として説かれる超自然的観念とそれを解くための祈祷の方法のことである。五島、平戸、生月等の島嶼部と松浦半島等の周縁部と福岡市、田川市、久留米市といった都市部のシャ-マン的職能者の持つ災因論には共通点もあるが相違点も多い。今図式的に整理すれば、周縁部ではカゼが災因論として説かれることが顕著であるのに対し、都市部ではサハリが説かれることが多い。カゼはそれを海や墓場などで負うことで熱病になったり、体が重く動けなくなったり、精神的不安に陥ることになる。一過性のものではらったり、落したりできる非人格的な概念である。これに対しサハリは死霊のサハリ、水神やコンジンのサハリ等と説かれるように、身近かな死者の霊や神仏の霊に対して不敬をなすことであると考えられている。その場合はシャ-マン的職能者が神がかって、霊の言葉を取りつぎ、おわび言葉(オコトワケ)をのべ、非礼をわび、供養をしなければならない。どちらかというと人格的な概念と言える。両者の性格を合せ持ったものが生霊カゼの観念である。生霊カゼとは他人の恨み、そねみをかうことで、周縁部でも都市部でも共通して説かれている。生霊カゼは離婚や事業の失敗などの家庭的不幸をもたらすという。生霊カゼははらったり、落としたり、相手に送り返したりできるが、それは根本的解決とはならず、実生活の上で恨みやそねみを解消する行為をしなければ解決しないと考えられている。これはシャ-マン的職能者の潛存的な役割が村落共同体や都市のコミュニティ-の人間関係の調整役であったことを暗に物語るものであると考えられる。
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