1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610157
|
Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
竹田 旦 創価大学, 文学部, 教授 (60015360)
|
Keywords | 分牌祭祀 / 比較民俗学 / 祖先祭祀 / 位牌 / 隠居 / 本家・分家 / 長崎県五島列島 / 韓国済州島 |
Research Abstract |
「分牌祭祀」とは,父親の葬式は長男(本家)が,母親の葬式は二男(分家)が分担し,両親の位牌を本家と分家に分けて年忌や盆の祭りを営む慣行である。それは基本的には位牌による死者・祖先祭祀の問題である。そして慣行を支える基盤に、(1)隠居慣行との分布重複,(2)夫婦家族の形成,(3)財産の均分相続,(4)本分家間の交際などが問題点として指摘された。平成3年度では,長崎県五島列島,鹿児島県甑島,福島県白河市等において現地調査を実施した。これらの地域では,一部に慣行に大きな変化が生じ,その伝承すら確認できない場合もあった。この慣行では,何よりもまず兄と弟がいて,本家と分家に家を分けることを前提にしている。しかしその前提は,いわゆる高度経済成長によって人口の都会集中が進展したために崩壊してしまった。離島・僻地では兄弟を故郷に留め,分家を創設することは困難となっている。ところが調査の結果,たとえば五島列島では慣行はそのまま消滅したのではなく,諸種の変異を生んで,以下のような方式が成立していることが確認された。 1.本土に出て分家を創設した二男が,母親の葬式・年忌の都度帰郷して「位牌持ち」の責任を果たす方式。 2.老いた母親を本土の二男が引き取って扶養に当たるとともに,死ねばそのまま本土で葬式・年忌を行う方式。 3.両親の扶養・葬式は故郷の長男(本家)がすべて担当し,後に母親の位牌だけを本土の二男に届け,位牌祭祀を分担させる方式。 4.長男・二男を問わず,故郷に残った者が父親,本土に出た者が母親に葬式・年忌を分担して位牌祭祀に当たる方式。 これらは分牌祭祀の慣行自体の保持・変異を究明するとともに,中国・韓国など東アジアにおける比較民俗学的考察を通じて,日本人の祖先祭祀・位牌祭祀の特質を追究するのに役立つものであろう。
|