1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610176
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
吉村 武彦 明治大学, 文学部, 教授 (50011367)
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Keywords | 氏姓制度 / 部民制 / 金石文 / 大和王権 |
Research Abstract |
大化前代における大和王権の構造を究明するには,氏姓制の成立を明らかにしなければならない。そのために必要な研究課題である5世紀の(a)江田船山古墳出土大刀銘と(b)稲荷山墳出土鉄剣銘にみられる典曹人や杖刀人のような人制研究(第1段階),および(c)隅田八幡宮所蔵人物画像銘にみられる開中費直のような成立期の氏姓研究(第2段階)の歴史的展開過程を解明する作業を行なった。 1.本年度は(a)(b)(c)に関する従来の研究文献をパソコンに入力して,デ-タベ-スの作成を開始するとともに,それぞれの研究の問題点を掌握した。また残存・所蔵場所付近の考古学的調査を実施し,文字使用に不可欠の渡来人関係の遺跡との有機的関連性を把握した。 2.銘文の釈文確定については,全文が確定している(b)に対し,(a)の確定作業をほぼ終了させることができた。引き続き,(c)の確定に向けて研究を続行している。 3.氏・姓の成立は,大和王権と地方豪族との政治的貢納関係と密接な関連がある。(c)が紀伊で発見されたことは,大和王権における紀伊の歴史的位置を示すとともに,開中(河内)との政治的関係の実在を示唆している。古墳などの考古学的研究を媒介させることによって,全体像解明への手がかりを得ることができた。 4.5世紀の王権の支配構造の解明,および氏姓制の成立と密接に関係する部民制研究の成果と問題点の整理作業に着手した。氏・部民の研究文献リストのデ-タベ-ス化の作業をはじめ,現在,検索問題などの問題点を検討中である。前者の問題では,5世紀の王権研究の小括をほぼ終了させ,引き続き部民制研究の問題点の解明をめざしている。以上が,本年度の研究実績の概要と今後の研究課題である。
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