1991 Fiscal Year Annual Research Report
皇国地誌を利用した明治維新神仏分離・廃仏毀釈の基礎的研究ー東北地方の場合ー
Project/Area Number |
03610177
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村田 安穂 早稲田大学, 教育学部, 教授 (90063601)
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Keywords | 皇国地誌 / 神仏分離 / 廃仏毀釈 |
Research Abstract |
研究課題に関して,今年度の研究対象とする岩手県につき,史料の調査・収集作業を中心に行なった。基礎的史料である皇国地誌は,岩手県の場合,県立図書館に『巖手縣管轄地誌』の書名で内務省へ提出の副本全131冊3759丁がある。また盛岡市中央公民館には南部家旧蔵の清書本の完本がある。両者は,郡名村名に読み仮名の有無の違いがあるものの同一文章である。明治12年から同18年にかけての編輯で,内務省の督促により急遽完成し提出したようである。編輯例則は,明治8年6月太政官達第97号に準拠し,さらに同年11月太政官達第196号の追補に従い戸口等の調を同9年1月1日現在とし,「郵便所」を「郵便局」に改めるなどしている。ただし「古跡」の項目は,管轄地誌の凡例に「古跡古墟各村ニ星残ス皆国主郡主其臣ヲ置キ或ハ土豪ノ居舘ナリ依テ舘ト称ス今其口碑ヲ信ス可キヲ村誌ニ載ス」,「其著レタルハ郡誌ニ載ス」とあるように,そこには中世・近世初期の土豪の舘趾の記載しかなく,同項目に廃寺趾の記載がある他県の皇国地誌と異なっている。そこで神仏分離後の廃寺状況をみるには,分離が鎮静した同9年現在の「社」「寺」の記載はあるので,これと幕末の地誌における社寺の記録や南部藩等の領内社寺の書上の史料等と照合する必要がある。幸い県立図書館・盛岡市中央公民館には南部藩による社寺の書上や,真宗本願寺派による明治初年の管内寺院由緒の書上や,郡による調査記録も断片的に残存しているので不十分ながら追求は可能である。また県域では,明治8年迄青森県に所属した二戸郡で廃仏毀釈が激しく展開したが,今年度の調査で二戸郡全域の状況を具に示す新史料を収集し得た。県行政文書等を中心にマイクロフィルムにそれらを収集したが,今後若干の史料を継続収集の上,合せて検討考察を加え,後日の発表に備えている。
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