1992 Fiscal Year Annual Research Report
皇国地誌を利用した明治維新神仏分離・廃仏毀釈の基礎的研究-東北地方の場合-
Project/Area Number |
03610177
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村田 安穂 早稲田大学, 教育学部, 教授 (90063601)
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Keywords | 皇国地誌 / 明治維新神仏分離 / 明治維新廃仏毀釈 / 東北地方 / 宮城県 |
Research Abstract |
研究課題に関して,今年度の研究対象とする宮城県につき,関係史料の調査・収集作業を中心に行なった。基礎的史料である皇国地誌は,宮城県の場合,宮城県図書館に『磐城国某郡地誌』,『陸前国某郡地誌』の標題で全26冊所蔵されている。磐城国については,刈田・亘理の二郡の地誌(付図共),陸前国については,柴田・名取・宮城(付録・仙台誌)・黒川・加美・玉造・牡鹿・本吉の八郡の地誌(付図共)と志田郡の付図(地誌欠)である。明治14年〜同18年の成稿で,内務省へ提出した際の副本と考えられる。他の諸郡については,県行政文書中の『記録係諸綴』(明治11年〜同18年)によると,前記の諸郡の外,志田・遠田・登米・桃生の四郡の地誌(付図共)は明治18年6月現在成稿・進達済であり,また伊具・栗原の二郡は草稿の段階にあり,本文は未訂正,付図は未完成であった。志田郡の付図は確認されているが,それ以外については所在が不明である。地誌の記載は,皇国地誌編輯例則(明治8年6月太政官達第97号)と追補(同年11月太政官達第196号)に準拠している。従って「社」「寺」の記載は,神仏分離後の明治9年の現況を示しているが,埼玉・長野・宮崎等の諸県と異なり,「古跡」の項目に廃寺の記載がみられない。岩手県の場合と同じである。そこで維新期の社寺の動態を考察するには明治期の行政文書や他の文書記録によらねばならない。場合によっては幕末の史料に溯って調査する必要があることはいう迄もない。現在確認される10郡の皇国地誌によれば,明治9年の神社総数は1118戸,寺院総数は626カ寺(うち曹洞宗307カ寺)で郡別でも神社数が寺院数を遥かに上回っているが,宮城郡のように神社数233戸,寺院数230カ寺でほぼ同数の郡もある。地域性に視点を据えた考察が必要とされるゆえんである。
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