Research Abstract |
研究課題に関して,今年度県別の研究対象である福島県につき,関係史料の調査・収集作業を行なった。基礎的史料の皇国地誌は,福島県では,明治18年3月政府の皇国地誌編纂中止の指令によって四郡以外は完成をみなかった。福島県立図書館には政府へ提出の磐城信夫伊達宇多四部の副本と一部の稿本が架蔵されている。政府への提出状況を進達書類でみると,磐城郡36村誌35冊(明治12年4月),信夫郡1町69村誌70冊・同郡誌1冊(13年5月3日),伊達郡12村誌5冊(13年10月6日),伊達郡3村誌3冊(15年3月28日),伊達郡77村誌20冊・同郡誌1冊(16年11月21日),宇多郡8村誌4冊(15年3月28日)となっている。編輯御用係は大須賀次郎,中川英右,佐藤精明,川瀬教文である。現在の架蔵状況と違う点は磐城が43村誌10冊合本4冊,宇多が50村誌4冊・同村誌稿10村3冊である。編輯係は各村の書上げを基に成稿するが,成稿年月日をみると磐城の43村誌は明治10年3月3日から同11年12月10日迄かかっている。宇多の50村誌は同14年8月から17年4月22日迄,郡誌は18年3月16日である。未完成の郡については,稿本や材料となった村誌取調書が諸家文書・戸場役場文書・区有文書・学校・県歴史資料館・市町立図書館等に現存し,例えば,いわき市史資料集には磐前郡の,川前村誌には楢葉郡の,郡山市史資料編には安積郡のそれぞれ該当地域村の発見分が収録されている。残存分の調査・確認作業にはかなりの時間を必要とする。なお,神仏分離・廃仏毀釈の状況については,東北他県と同様,皇国地誌に廃寺堂庵の記載がなく,例えば,信夫郡では明治9年1月1日現在として寺院96宇,うち天台宗17宇,真言宗15宗,浄土宗6宇,臨済宗9宇,曹洞宗8宇,日蓮宗2宇,真宗8宇,時宗1宇,堂145宇,庵1宇と記されている。明治5年・明治11年の寺院・神社明細帳などを参照せねばならない。
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