1991 Fiscal Year Annual Research Report
南北戦争前のアメリカ植民協会による自由ニグロのリベリア植民政策について
Project/Area Number |
03610208
|
Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
清水 忠重 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (20025076)
|
Keywords | 奴隷制 / 自由ニグロ / アメリカ植民協会 / リベリア / 奴隷貿易取締法 / 奴隷制廃止運動 |
Research Abstract |
アメリカ植民協会は1816年末、すなわちモンロ-大統領のいわゆる「好感情の時代」がはじまる直前に発足した自由黒人をアメリカ国外に除去することを目的とした組織である。協会の「第一次年次報告」に掲載された手紙のなかでR.G.ハ-パ-は黒人植民の必要性を、1.アメリカ白人のため(すべての黒人をアメリカから取り除き、その代わりヨ-ロッパから白人労働者を移住させる。そうすることによって人種戦争の不安をつみとる)、2.アメリカ黒人のため(アメリカにいるかぎり黒人は決して平等にはなれない。人種的偏見はなくならない)、3.アフリカの啓蒙(暗黒大陸にキリスト教と高度な白人文明を伝えることによって、黒人に対する白人の積年の罪滅ぼしをする)といった観点から、アフリカ植民の意義をといている。この論法はそのご繰り返しもちだされることになる。また植民協会に対する当時の批判のなかに、1.アフリカは不毛な砂漠であり、2.獰猛な野蛮人の土地であって、ここに植民地を設ける作業は失敗するであろうという主張が繰り返しでてくるが、これにたいする反論として、植民協会は1.アフリカは肥沃な土壌と豊かな産物のとれる豊じょうな土地であり、2.またアフリカ人は生来amiableでkindであるとする主張が展開されることになる。後年、ストウ夫人の小説において集大成されるアフリカ美化の要素はすでにかなり早い時期にその萌芽を現しているといってよい。植民協会はその膨大な植民の費用のねん出方法として、個人の寄付と連邦政府の援助をあてにして、後者にかんしてはとくに西部公有地の売却費を植民にあてることを期待していたが、地域利害の激化とともにこの期待は次第に望み薄となり、植民の企画は財政面から破綻していくことになる。
|