1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610218
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 米一 北海道大学, 言語文化部, 教授 (60002622)
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Keywords | アイヌ語話者 / 日本語北海道方言 / アイヌ語の干渉 |
Research Abstract |
これまで、アイヌ語・アイヌ文化に関する研究は、かなりの成果を上げているが、アイヌ語話者の日本語北海道方言に関する研究は皆無の状況にあった。私は、アイヌ語を母語として育ったアイヌ語話者が、どのような日本語(北海道方言)を身につけ、実際に話しているかについて、その自然会話を可能な限り録音し、これを保存するとともに、アイヌ語の干渉及び周囲の日本語話者の日本語北海道方言との関係を比較しようと考えた。 アイヌ語を母語として育ち、現在もアイヌ語を自由に話したり聞いたりすることのできる話者は、北海道内にわずか10名前後が健在であるにすぎない。私は、そのうちの第一級の話者と考えられる、北海道静内郡静内町在住の、葛野辰次郎氏(1910年生れ)の協力をいただき、今年度延べ約20時間分の会話をデジタル録音し、一部はビデオ撮りすることもできた。また、同じ静内町在住の織田ステ氏(1899年生れ)の会話も約4時間分録音し、ビデオ撮りすることができた。更に、菅泰雄氏に研究協力者となってもらい、旭川市在住の荒井源次郎氏と杉村京子氏の録音を入手することができた。静内町及び旭川市での日本語話者の方言調査も行った。 これらの資料に基づき分析を進めているところであるが、これまでに得られたアイヌ語話者の日本語北海道方言の特徴に関する知見としては、育った環境による個人差がかなり大きいが、しかし共通した特徴も多く観察されることが分かった。。たとえば、音韻面の、サ・シャ行音及びザ・ジャ行音を混同すること、清濁の区別がないか混同が激しいこと、などは母語アイヌ語の干渉と考えられるが、文法面・語彙面にはアイヌ語の干渉はあまりなく、日本語を身につけ始めた当時のやや古い形の北海道方言を使用している。
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