1992 Fiscal Year Annual Research Report
ベン・ジョンソン再評価-ヒューマニズム芸術の復権に向けて
Project/Area Number |
03610242
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山田 由美子 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (50200754)
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Keywords | ベン・ジョンソン / ヒューマニズム / 政治 / 宗教 / 思想史 / ポストモダニズム / バーソロミューの市 / 新歴史主義 |
Research Abstract |
ベン・ジョンソンのヒューマニズムを再評価する本研究の2年目に当る今年度は、昨年度の芸術関係の資料に続き、政治史、宗教史、科学史、風俗史の資料を収集した。この2年にわたる研究の最大の成果は、小論「ベン・ジョンソン研究の動向と課題」をまとめ、報告する責任を果たせたことである。その中で、最近10年間のポストモダニズム興盛の中で、ジョンソン研究に目立った進展が見られないのは、ポストモダニズムの歴史そのものがジョンソン文学の特徴であるヒューマニズムの反対運動として始まっているところに原因があることを指摘し、一方で歴史家・思想史研究家の研究の一部に見るベき成果が現れていることから、歪んだ形で今日まで伝えられているヒューマニズムを本来の姿に戻すには、この方面の研究が重要であることを指摘した。また、今年度は、口頭発表として、一回目は新歴史主義学者のジョナサン・ゴールドバーグの批評、二回目はジョンソンの喜劇『バーソロミューの市』に関する研究発表を行った。前者では、ポストモダニズムの延長としての新歴史主義が、歴史資料の重要性を忘れ、理論のみがから回りする傾向を指摘し、後者では、『バーソロミューの市』の中で特定の歴史的事件を普遍的教訓として生かしているヒューマニズム的制作態度を取り上げた。研究の進展につれて、ヒューマニズム文学は、文学だけに終わらず、広く政治、宗教、科学、芸術、哲学、風俗その他に対する知識と判断力を読者に植え付けることを目的にしていることが明確になってきた。最近の思想史の分野では、ヒューマニズム見直しの兆しが見られることから、思想史を中心とした来年度の研究は、本研究の締めくくりとして相応しいものになりそうである。
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