1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03610257
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
武内 紹人 京都教育大学, 教育学部, 助教授 (10171612)
|
Keywords | チベット語 / Old Tibetan / 敦煌 / 契約文書 / 言語接触 |
Research Abstract |
本研究の目的は、古チベット語文献の分析を通して8ー10世紀の古チベット語の口語形式とそれが使用された社会言語学状況を解明することである。とくに多言語・多民族社会で書かれたテキストから言語形式を再構成する際、地域差・時代差にくわえ、漢語・コ-タン語・ウイグル語など書き手の母語の干渉をはじめとする社会言語学的ファクタ-を重視するのが特徴である。作業は、1)文献の解読とデ-タベ-ス化、2)デ-タの分析と同定・解読のうえデ-タベ-ス化をほぼ終了した。その結果、つぎの諸点が判明した。 1.チベット語契約文書の書式は、漢文契約文書をモデルに創り出された。 2.書式成立の時期は7ー8世紀中葉、チベット支配下のシルクロ-ド南道(おそらくコ-タン)であろう。 3.書式には、通常の語法では分析できない慣用句化された言い回しがおおく含まれ、calqueも少数である。 4.人名の分析から、契約の当事者の大半は、漢人・ソグド人などチベット支配下の敦煌・トルキスタンの非チベット人住民であることがわかった。また、筆記者のおおくは漢人の写経生であることも判明した。 5.チベット支配下の敦煌は、チベット語と漢語の契約文書が併用される二言語併用状況にあった。 6.コ-タンで書かれた文書は、敦煌文書とくらべ書式は同一だがことなる言語的特徴をしめす。 すべての契約文書のテキスト・譯注・解説・索引は、英文のモノグラフとして刊行すべく準備中である。平成4年度は、手紙文書を中心にシルクロ-ド南道出土文書をデ-タベ-ス化するとともに、テキストデ-タの総合的な分析をすすめる予定である。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] S.Ihara et.al.(eds.): "Tibetan Studies" Naritasan Institute for Buddhist Studes, (1992)
-
[Publications] TAKEUCHI,Tsuguhito: "A Study of Old Tibetan Contracts" Indiana University(Ph.D.dissertation), (1992)