1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03620009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福家 俊朗 名古屋大学, 法学部, 教授 (40083315)
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Keywords | 土地税制 / 政策税制 / 土地譲渡益課税 / 開発利益の公的還元 / 土地保有課税 / 土地問題 |
Research Abstract |
1 今年度は、所有より利用が重視されるべき土地がいわゆる公序を内在させていることに留意しつつ、このような土地を税源とする法論理を、明らかにする検討を行った。 具体的には、土地保有に担税力をみる代表的学説(純資産増加説)としての包括的所得概念の分析と、財政学において展開されたその守備範囲を法学的に明らかにした。この作業は、特にわが国の土地税制の中心に据えられてきた土地譲渡益課税の理論的根拠として主張された上記学説について、それに基づいて実際にできあがった租税制度との相違の法的評価(功罪)を行い、土地の保有や譲渡および得られる収益に担税力をみる租税制度のあるべき理論的形態に関する本研究の重要課題として追求されたものである。 2 他方、本研究の土地税制の政策的利用可能性に係わり、特に1969年度以降の土地税制の法構造的特色を明らかにした。そのことによって、土地譲渡益課税中心の政策的利用の限界を法理論の問題として解明することができた。なお、土地政策関係省庁におけるヒアリング調査等を通して、土地基本法もさることながら、土地政策についての実質的な総合調整権限をもった国の機関が存在しないことが、土地税制の不徹底ないし理論的混乱に寄与している実態も把握することができた。 3 個別税制としては、地価税の検討を特に行った。当初から地価抑制、土地供給促進等を目的とした政策税として導入されたからである。しかし、土地税制の切り札のごとく扱われている土地保有税としての地価税は、租税の法形式を利用しているために、徹底したいわゆる「バブル地価=投機的地価」の解消の制度となりえない法理論的難点を抱えていることを明らかにしえたが、地価税に代わりうるような法制度の検討が残されている。
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