1991 Fiscal Year Annual Research Report
インフォ-ムド・コンセントの法理および患者の意思と自己決定権に関する比較法的研究
Project/Area Number |
03620024
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丸山 英二 神戸大学, 法学部, 教授 (10030636)
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Keywords | インフォ-ムド・コンセント / 説明と同意 / 同意能力 / 自己決定権 |
Research Abstract |
本年度の研究で得られた知見のうち,日米(加)各国の法状況の概要としては,アメリカでは1970年代からインフォ-ムド・コンセントの問題が制定法によって扱われる動きが始まったが,その動きはすべての州に及んだわけではなく,現在でも約半数ほどの州では判例法によってこの問題が処理されていること,制定法,判例法いずれが支配する州においても,説明すべき内容の基準では医療慣行基準が,因果関係の基準については客観説が多数を占めるものの,細かく見ていけばかなり多様な展開が示されていること,アメリカと同じような展開がカナダなどでも見られること,わが国の判例に関しては,アメリカ流の理論を説くものもある一方で,医師の裁量権や治療の必要性,一般的な医学常識などを理由に,患者の救済を否定する判決もかなりあり,必ずしも最近の判決がインフォ-ムド・コンセントの法理を積極的に支持しているとは限らないこと,同意の前提としての説明とそれ以外の説明との違いは認識されているものの両者の違いがアメリカほど際立っていないこと,アメリカのような一般的基準が説明内容に関しても,因果関係に関しても述べられていないこと,またわが国における慰謝料の一般的認容が,この問題においても因果関係の証明のない事例における救済というかたちで現れていること,などが挙げられる。次に,本年度重点を置いて研究した同意能力の問題については,近年アメリカで刊行されたいくつかの文献を手がかりに学習した。この問題については,同意能力を如何に捉えるか(本人の意思を容認するかどうかを決めるふるい分け機能のみに着目するか,理解・認識等説明から同意に至る過程を重視するか)という基本的問題について認識の違いがあるとともに,その認識の違いに対応して,同一の医療について同意と拒否とで能力の水準を違えることが妥当か否かについても意見の対立があることが判明した。
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