1992 Fiscal Year Annual Research Report
「日本的雇用システム」と労使関係法政策の関連の研究ー地労委による不当労働行為審査の実情からみたー
Project/Area Number |
03630022
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
遠藤 公嗣 山形大学, 人文学部, 助教授 (20143521)
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Keywords | 地労委 / 賃金 / 昇格 / 差別 / 査定 / 和解 / 職能資格 |
Research Abstract |
1.東北地方の地労委に係属した賃金・昇格差別事件につき、労働者側当事者の研究協力を得ることができ、地労委の「事実認定」の基礎となった膨大な文書を借り受け、その大半を複写した。 2.これらの文書から、11年間にわたり、査定差別が累積する具体的情況が分析できた。すなわち、差別は性と信条によってなされ、しかも、累積する査定額に分散のあり方および査定額と年齢との相関関係の2点において、性の差別と信条の差別でパターンが異なることが明白となった。これらは初の知見であり、論文にまとめて、すでに発表した。 3.中労委の再審査となったこの事件は、92年3月に和解となった。企業側が和解に応じる姿勢に変わったからである。その変化の理由の一つは、約20年間ちかく差別を続けている間の、企業競争力の頭打ちである。差別と企業競争力との関係は、アメリカ合衆国の経済学研究における重要テーマであり、その日本におけるあり方について、この事件を素材に、検討に着手している。 4.北陸地方の地労委に係属し、すでに和解の成立した賃金差別事件につき、労働者側当事者の研究協力を得ることができ、地労委の「事実認定」の基礎となった文書を閲覧し、その主要部分を複写した。この事件を第2のケーススタディにする予定である。 5.これらの研究の間、職能資格給制度についてドイツ語で小論を書く機会が与えられ、執筆発表した。また、日本の査定制度と査定による賃金差別につき、ミュンヒェンとベルリンで研究会発表をする機会があったので、実施した。
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[Publications] Endo,Koshi: "Japan-wo sich Wohlverhalten bezahlt macht" Die Mitbestimmung. 10月号. 43-44 (1992)
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[Publications] 遠藤 公嗣: "査定制度による性と信条の差別" 日本労働研究雑誌. 398号. 37-48 (1993)